福島県耶麻郡
そこにいるだけで、ワワワクが止まらない小さな美術館がある。立ち上げたのは、本来ならばアートとは無関係の社会福祉法人の人々。そこに込められた想い、展示、建物、全てが目からウロコの連続だった……!!
最寄りのICから【E4】東北自動車道「猪苗代磐梯高原IC」を下車
最寄りのICから【E4】東北自動車道「猪苗代磐梯高原IC」を下車
「この美術館をひとことで表すなら、“美術館らしくない美術館”です」
学芸員の大政愛さんは、あの日ちょっと誇らしそうに言った。その通りだなあ、と原稿を書きながら大きく頷いている自分がいる。
夏の終わり、4歳の娘の手をつなぎながら磐越西線猪苗代駅に降りたった。
「なつかしいなあ」と娘のナナにしみじみ話しかけた。ナナはきょとんとして、「なにが?」と聞きかえす。
「ここにきたことがあるんだよ。まだ小さいころだけどね」
小学生のころ、家族4人で猪苗代湖に遊びにきた。父はあまり家族を顧みない男だったので、いま振り返るとあれが唯一の家族旅行だった。
あー、なつかしい。とはいえ、今回は湖で泳いだり、感傷にひったりするヒマはなかった。
「さあて、美術館に行こう。きっと素敵なところだからナナも気にいるよ」
いつもならば、「えー、美術館、やだー!公園がいい」と言う娘だが、旅という非日常のおかげか、素直に「うん」と頷いた。
その美術館のウワサは、2年ほど前からちょくちょく聞いていた。ざっくりいえば「いい美術館らしい」というのがウワサの概要。じゃあ、いつか行ってみようかな、と思っていたわけだが、ある日「いつか」は「いますぐ」に変わった。
日本全国で様々な美術館を見てきた友人が、こんな風に言うからだ。
「あの美術館はね、美術を専門にするスタッフがほとんどいないんだけど、すごくいい展示を企画していて、見せ方もうまくて、もう美術関係者としてはすっごいジェラシー!!」
おお、そんなにいいのか! じゃあ、行かないと!
駅から美術館へは、車で10分ほど。
風格のある蕎麦屋さんの奥に、どっしりと美しい蔵が佇んでいた。その蔵こそが、「はじまりの美術館」だった。