未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
146

福島県耶麻郡

そこにいるだけで、ワワワクが止まらない小さな美術館がある。立ち上げたのは、本来ならばアートとは無関係の社会福祉法人の人々。そこに込められた想い、展示、建物、全てが目からウロコの連続だった……!!

文= 川内 有緒
写真= 川内 有緒、はじまりの美術館(一部写真提供)
未知の細道 No.146 |25 September 2019
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
福島県耶麻郡

最寄りのICから【E4】東北自動車道「猪苗代磐梯高原IC」を下車

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#1お蕎麦屋さんの奥の蔵へ

「この美術館をひとことで表すなら、“美術館らしくない美術館”です」
学芸員の大政愛さんは、あの日ちょっと誇らしそうに言った。その通りだなあ、と原稿を書きながら大きく頷いている自分がいる。

夏の終わり、4歳の娘の手をつなぎながら磐越西線猪苗代駅に降りたった。
「なつかしいなあ」と娘のナナにしみじみ話しかけた。ナナはきょとんとして、「なにが?」と聞きかえす。
「ここにきたことがあるんだよ。まだ小さいころだけどね」
小学生のころ、家族4人で猪苗代湖に遊びにきた。父はあまり家族を顧みない男だったので、いま振り返るとあれが唯一の家族旅行だった。
あー、なつかしい。とはいえ、今回は湖で泳いだり、感傷にひったりするヒマはなかった。
「さあて、美術館に行こう。きっと素敵なところだからナナも気にいるよ」
いつもならば、「えー、美術館、やだー!公園がいい」と言う娘だが、旅という非日常のおかげか、素直に「うん」と頷いた。

その美術館のウワサは、2年ほど前からちょくちょく聞いていた。ざっくりいえば「いい美術館らしい」というのがウワサの概要。じゃあ、いつか行ってみようかな、と思っていたわけだが、ある日「いつか」は「いますぐ」に変わった。 
日本全国で様々な美術館を見てきた友人が、こんな風に言うからだ。
「あの美術館はね、美術を専門にするスタッフがほとんどいないんだけど、すごくいい展示を企画していて、見せ方もうまくて、もう美術関係者としてはすっごいジェラシー!!」
おお、そんなにいいのか! じゃあ、行かないと!

駅から美術館へは、車で10分ほど。
風格のある蕎麦屋さんの奥に、どっしりと美しい蔵が佇んでいた。その蔵こそが、「はじまりの美術館」だった。

築130年の歴史ある酒蔵を改修して、この美術館は2014年に生まれた。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。