未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
146

「わくわく!」で世の中を照らす
「美術館らしくない美術館」
猪苗代 はじまりの美術館

文= 川内 有緒
写真= 川内 有緒、はじまりの美術館(一部写真提供)
未知の細道 No.146 |25 September 2019
この記事をはじめから読む

#3美術館らしくない美術館

いまさらながらだが、はじまりの美術館は、障害のある人の作品を中心に展示する場所だ。
障害者によるアート作品は、世の中では「アウトサイダーアート」などとも呼ばれ、特殊なカテゴリーに位置付けられることもある。
しかし、はじまりの美術館は、そういった区分けに強く固執するわけでもなく、障害者の作品も、そして第一線で活躍するアーティストの作品も、フラットに展示するという。むしろこだわるのは、スタッフの「この作品を世に紹介したい!」というアツい思い。そこに有名、無名は関係ない。だからだろう、学芸員の大政さん(唯一の美術の専門)は、「ここは美術館らしくない美術館です」とちょっと誇らしげに言うのだった。

館長の岡部さん(左)と大政さん(右)

ちなみに、そんなボーダレス具合はスタッフに関しても同じらしく、スタッフのバックグラウンドは多岐にわたる。館長の岡部さんは、もとをたどれば福祉事業所の生活支援員。その他にも元シェフやランドスケーブを学んでいた人など。
「基本的には四人で運営しています。福祉や美術、食、地域など、それぞれの視点を大切にしながら、展示の企画をしています」(岡部さん)

さらに、この美術館にやってくる人も、ノーボーダー。障害がある人、ない人、地元のお母さん、おばあちゃん、子ども、観光客、大きな美術館の館長まで。誰が来ても、みんなでワイワイするのがここの流儀。地域の方との会合は「よりあい」と呼ばれ、美術館のコアな活動のひとつとなっている。

ワークショップや会合「よりあい」には様々な年代の人が集まる
このエントリーをはてなブックマークに追加

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。