いまさらながらだが、はじまりの美術館は、障害のある人の作品を中心に展示する場所だ。
障害者によるアート作品は、世の中では「アウトサイダーアート」などとも呼ばれ、特殊なカテゴリーに位置付けられることもある。
しかし、はじまりの美術館は、そういった区分けに強く固執するわけでもなく、障害者の作品も、そして第一線で活躍するアーティストの作品も、フラットに展示するという。むしろこだわるのは、スタッフの「この作品を世に紹介したい!」というアツい思い。そこに有名、無名は関係ない。だからだろう、学芸員の大政さん(唯一の美術の専門)は、「ここは美術館らしくない美術館です」とちょっと誇らしげに言うのだった。
ちなみに、そんなボーダレス具合はスタッフに関しても同じらしく、スタッフのバックグラウンドは多岐にわたる。館長の岡部さんは、もとをたどれば福祉事業所の生活支援員。その他にも元シェフやランドスケーブを学んでいた人など。
「基本的には四人で運営しています。福祉や美術、食、地域など、それぞれの視点を大切にしながら、展示の企画をしています」(岡部さん)
さらに、この美術館にやってくる人も、ノーボーダー。障害がある人、ない人、地元のお母さん、おばあちゃん、子ども、観光客、大きな美術館の館長まで。誰が来ても、みんなでワイワイするのがここの流儀。地域の方との会合は「よりあい」と呼ばれ、美術館のコアな活動のひとつとなっている。