待ち合わせ場所として指定されたのは、JR宇都宮線の矢板駅から車で10分ほどの「高塩菓子店」のカフェコーナーだった。
ショーケースには繊細な輝きを放つ和菓子が並んでいて、うっとりと目が奪われる。カウンターの向こう側で働くのは二人の女性。聞いてみると、なんとご姉妹だそうだ。
「私が和菓子を作り、妹(高塩友美さん)がカフェを切り盛りしていいます」
お話してくれたのは、お姉さんの高塩佳代さん。もしや代々続くお菓子屋さんなのかなと思いきや、そうではなく、佳代さんが自分の和菓子屋店を構えるという佳代さんの夢を叶えるため、2年前に姉妹でオープンしたそうだ。姉妹二人とも山小屋で働いていた経験もあるとかで、店内にはキリリと清々しい空気が流れている。
そこに、メガネが似合う背の高い女性が現れた。Bullock Books店主の内田有香さんだ。
「こんにちはー!」
ご挨拶もそこそこに、それぞれ気になったお菓子とコーヒーをオーダーし、喫茶コーナーに腰を落ち着けた。
すぐに聞きたかった質問を直球で投げかけてみた。
──どうしてこんな時代に本屋さんを開いたんですか? しかも、そんな山の中に!
すると内田さんは軽やかな口調で、「びっくりするほど思いつきなんですよー!」と、話を始めた。