茨城県つくば市
昔から掃除には欠かせなかった箒(ほうき)。掃除機やクイックルワイパーなど便利な掃除グッズの普及により家にない人も多いかもしれないが、一度は使ってみてほしい箒がある。有名な産地のひとつである茨城県つくば市で、女性職人が種からつくる生命力溢れる箒だ。
最寄りのICから【E6】常磐自動車道「桜土浦IC」を下車
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箒(ほうき)が何からできているか、知っている人はどのくらいいるだろう。私は小学生の頃から学校の教室掃除などで箒を使ってきたにもかかわらず、何から作られているかなんて考えたこともなかった。だからクラフトマーケットで箒の材料である「ホウキモロコシ」と、それを巧みに操り一本の箒にしていく若い女性の姿を見て、釘付けになった。
職人さんの名前は、フクシマアズサさん。小柄な彼女は、たくさんの箒がぶら下がったテントの片隅で忙しそうに接客をしながらも、箒を編む手を止めなかった。バラバラだったホウキモロコシが、みるみるうちにまとまって箒になっていく。
私が持っていた箒のイメージは、ゴワゴワと固くて、床を掃いてもゴミがあまり取れない……というもので、正直ほしいと思ったことすらなかった。ところがフクシマさんの箒はやわらかく、柄の部分に続く網目の模様が美しい。
「ホウキモロコシなんて、箒用の植物があったんですね」と声をかけると「はい、私が育てています」という返事。なんとフクシマさんは自分の畑に種を蒔き育て、収穫したホウキモロコシから箒を作っているのだ。
かつて箒づくりでは、農家さんが育てたホウキモロコシを職人さんが買い取って箒を作るのが一般的だったという。なぜフクシマさんは、自分で種から箒をつくることになったのだろう。家に帰ってからも、箒のやわらかな手触りと、一心不乱に箒を編む彼女の姿が忘れられない。
そして初夏、収穫を前に青々と伸びるホウキモロコシを見に、フクシマさんに再び会いに、私はつくばへと向かった。