未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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あの日、寂れた街が劇場になった!

イクオさんが野毛・大道芸とともに歩んだ30年

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.134 |25 March 2019
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#41年のつもりが10年に!

イクオさん(サーカス学校にて)

 何年か経つと、今度はパリにフランス初の国立サーカス学校が設立された。イクオさんも講師として声をかけられ、パントマイムを教えはじめた。ちなみに、サーカスはフランスで「シルク」と呼ばれ、伝統的な芸能ジャンルのひとつだ。現在では、フランス国立サーカス学校は入学するのが非常に難しい学校である。

「そんな初の国立学校で日本人が教えるってすごいことですね」

 そう思わず言うと、「いやあ、そんなこともないよ! フランスってけっこういい加減じゃない? はっはっは」とイクオさんが笑うので、私も大笑いした。私も以前はフランスに住んでいたから、よくわかる。そう、フランスという国は良く言えば柔軟、悪く言えばとってもいい加減なのである。

 しかし、その分フランス人はアートへの理解は深く、またそれぞれが自分を表現することに貪欲だ。表現者に対するリスペクトも強いので、アーティストなど、表現者にとっては居心地の良い国である。

パリのサンジェルマン広場でも大道芸を披露した

 そして、フランスのもうひとつの特徴は路上文化だろう。広場や橋の上など、街の至るところにミュージシャンや大道芸人、絵描きがいて、表現者とそれを見る人が日々交差し、お互いに刺激しあう。ある意味で、街の全てが劇場なのである。そういう環境で過ごした歳月は、イクオさんに大きな影響を与えた。

 やがて、いつまでも日本に戻らないイクオさんに業を煮やした恋人(のちに奥さん)もフランスにやってきた。そして、その恋人が妊娠したことをきっかけに二人は日本に帰国。1年のつもりのフランス生活は、振り返れば10年に。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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