未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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あの日、寂れた街が劇場になった!

イクオさんが野毛・大道芸とともに歩んだ30年

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.134 |25 March 2019
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#3フランス人にパントマイムを教えたら……

 イクオさんたちが入学したのは、「ピノック&マト」という女性二人で運営している演劇学校だった。

「学校に入るなり『あなたたちの芸を見せてみろ』って言われて、今までやってきたネタを披露しました。それまでプロとしてテレビに出てたからさ、ある程度はできるわけ。そしたら『わかった。あなたたちには教えることがない』って言うんだよー。しかも、『実は私たちはもうすぐアフリカに公演に行くから、あなたたちが代わりに授業を教えて欲しい』って」

イクオさん(パリ時代 )

 えー!なんて適当な!
 しかし、これも何かの経験になるかもしれないと、イクオさんはフランス人の生徒40人を前に必死でパントマイムを教え始めた。

「それがさ〜、全然バカにされちゃって言うこときかないの! だってフランス語わからないからさ。コムサ〜、コムサ〜(こんな感じ)って、やって見せるんだけど、誰も真面目にやってくれない! 先生たちが帰ってくるやいなや、『もうこんなのヤダ!』って言ったよね」

その後写り住んだパリ(サンミッシェル)のアパルトマンの窓から

住み始めた家も、ずいぶんひどかった。場所は、モンマルトルの丘のふもと。その語感にはなんとなくロマンチックな雰囲気が漂うが……。

「屋根裏部屋で、ノミの館。どうも前に住んでいた人が動物を飼っていたみたいで。めちゃくちゃ虫に食われて。ノミとダニとナンキン虫。もう最悪。シーツにたくさんノミが落ちてるからセロテープで取りながら寝てました」

 苦労しているうちに一年が経ち、日本に戻る時期がやってきた。

「日本に帰るって先生たちに言ったら、突然二人が『このままフランスに残って我々と一緒に作品を作ろう!』って言い出して」

 なんて気まぐれなんだろう! 私だったら、そんな適当な人々に振り回されたくないと思ってしまいそうだが、イクオさんは、「それもいいかも」と思ったようだ。「泊まるところや生活費を保証してくれるなら」と掛け合うと、「心配ない」と二人は言う。

「一度日本に戻って、当時の恋人(現在の妻)に『今度は長くなるかもしれない』って話して。片道切符を買ってフランスに戻りました」

 そこからフランスでの活動が始まり、サーカス一座さながらにフランス全土を旅しながらパフォーマンスを披露し続けた。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

横浜、アートと大道芸をめぐる旅プラン

予算の目安20.000円〜

最寄りのICから【K1】首都高速神奈川1号横羽線「みなとみらいIC」を下車
1日目
横浜美術館BankARTなど、美術館やアートスポットをめぐりましょう。
本が好きならば、黄金町アートブックバザールも楽しい。

夜は、野毛のディープな夜を楽んで。
色々なお店を何軒もハシゴするのも野毛ならではです。
「ル・タン・ペルデュ」「うっふ」のステージの情報は要チェック!
2日目
野毛大道芸フェスティバルの時期ならば、1日めぐって楽しみましょう。
もしくはお散歩気分で、山下公園赤レンガ地区中華街など好きなスポットを巡ろう。

ファミリーならば、野毛山動物園に足を運んでは?
たくさんの動物が見られますよ!

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。