未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
133

現代のオアシス!「お寺の漫画図書館」

お寺で漫画を読み耽って僕は考えた。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.133 |11 March 2019
この記事をはじめから読む

#4ひとり漫画タイム

 安さんからひと通り説明を聞いた後は、ついに漫画タイム。僕は安さんが「雨の日にひとりで読んでいたら、怖くなって途中で読むのをやめた」と言っていた『密教僧 秋月慈童の秘儀 霊験修法曼荼羅』を手に取った。その日は雨、そして、図書館には僕ひとりしかいなかったからだ。

 ほかに誰か来たら話を聞きたいと思っていたのだけど、来ないものは仕方ない。広々とした、静まり返った畳の部屋でひとりくつろぎながら漫画を読む機会など、むしろ贅沢! と思い直し、『密教僧 秋月慈童の秘儀 霊験修法曼荼羅』を1巻、2巻と読み進めた。

 漫画家さんが実在の密教僧のもとに通い、「本当に起きた怖い話」を聞くという内容で、不思議な話が大好きな僕にとっては怖いというよりドキドキした。いつの間にか取材ということを忘れて没頭し、気づけば20時だった。こんなにぐんぐん漫画を読み進めたのはいつ以来だろう。写経、写仏、漫画の熟読でまさにあっという間の3時間だった。

 安さんにお礼を告げて、帰路につく。不思議だったのは、最初から最後までひとりだったのに、孤独感がなかったことだ。それはきっと、ニコニコと優しい笑顔を浮かべる安さんがいるからだし、もしかしたら山崎弁栄という明治時代の名のある僧侶が描いたどこか味がある仏画のせいかもれない。

部屋の奥に掲げられているのが、山崎弁栄さんが描いた仏画。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

現代のオアシス!「お寺の漫画図書館」を巡る旅プラン

予算の目安10.000円〜

最寄りのICから【C1】首都高速都心環状線「芝公園IC」を下車
1日目
芝公園でぶらぶら。昔ここに増上寺があったんだ、と思いを巡らせるのも乙。春は桜もきれい。開館時間なったらお寺の漫画図書館へ。好きな漫画を読み耽る。
2日目
すぐ近くにある観智院へ。図書館長の土屋正道さんは住職をしている観智院で様々な会を開催しているのでそれに参加してみる。大門、御成門など増上寺と縁のある場所を訪ね歩く町歩きも楽しい。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。