こうして2015年10月31日、「お寺の漫画図書館」がオープンした。ここの大前提として、異教徒も、無宗教の人も、子どもも、お年寄りも、外国人も、訪ねてきた人は誰でも迎え入れてくれる。唯一といってもいい決まりは、入退館時、本堂にある仏画に手を合わせること。その作法も特に定めておらず、シンプルに手を合わせて頭を下げるだけで問題ないそうだ。
木魚も叩き放題って自由ですよね、と言うと、土屋さんは「ここは少しユルいんです」と言って笑った。多聞院でお寺の漫画図書館以外に開催しているイベントについて話を聞いたら、確かに想像以上にオープンだった。
多聞院では月に一度、落語会が開催されている。これは日本文化つながりで理解できるのだが、驚いたのは毎週木曜日、タロット占いのサロンが開かれていること。思わず、「仏教とは対極にありそうですけど……」と言ったら、「知人にやってもらっているんです」。
「お坊さんは、話すのは得意ですけど、聞くのは得意じゃないっていう人も多いんです。私もそうですけど(笑)。でもタロット占いに来ている方は、胸のうちにあるものを吐き出しに来ているんですね。泣いてしまう方もけっこういます。そういう感情を受け止める場になっているのなら良いことです」