未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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現代のオアシス!「お寺の漫画図書館」

お寺で漫画を読み耽って僕は考えた。

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.133 |11 March 2019
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#7分け隔てがないのが仏教

多聞院の住職兼図書館長の土屋正道さん。僕の「お坊さん」のイメージを覆すほどオープンな方だった。

 ほかにも、難民申請をしている外国人に日本語を教えているグループから「なかなか外とつながりができない」と相談を受けると、多聞院の中庭を貸し出して菜園づくりに協力。その縁で、難民申請中のネパールの男性とグループの関係者が多聞院でカレーパーティーをしたこともあるという。

 日本は難民申請の認定率が0.2%と、極めて難しいことで知られる。そのネパールの男性は恐らく大変な思いをしていることだろうし、サポートする日本人も楽ではないはずだ。そういう人たちが多聞院に集って野菜を作ったり、カレーパーティーを楽しんでいる様子を想像したら、「一時の安らぎ」という言葉が浮かんだ。

 「分け隔てがないのが仏教ですから。生死を越えてすべてがつながっているし、いろいろなものがつながって今があるということです。もともと、お寺は政治や経済とは切り離された場所ですよね。都会こそ、そういうところで心を解放することが大切なんです」

 最初はただ単に、未知の漫画との出会いを期待してお寺の漫画図書館にやってきた。でも、土屋さんと安さんから話を聞き、写経、写仏を体験し、漫画を熟読して気づいた。多聞院には、どこか安心できる雰囲気がある。それはカフェの居心地の良さとはまた別もので、自分はここにいてもいい、受け入れられているという優しい感覚だ。

 そこで写経や写仏に集中すれば雑念を忘れるし、時間を忘れて漫画に読みふけるのも心の解放につながるだろう。落語だって、笑うことできっと心が楽になるし、受けた人が泣いてしまうタロット占いや心温まる菜園、カレーパーティーも同じく安らぎを提供している。そう、多聞院は現代のオアシスになっているのだ。僕は「心を解放することが大切なんです」という土屋さんの言葉を思い出しながら、思った。また漫画の続きを読みに来よう。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

現代のオアシス!「お寺の漫画図書館」を巡る旅プラン

予算の目安10.000円〜

最寄りのICから【C1】首都高速都心環状線「芝公園IC」を下車
1日目
芝公園でぶらぶら。昔ここに増上寺があったんだ、と思いを巡らせるのも乙。春は桜もきれい。開館時間なったらお寺の漫画図書館へ。好きな漫画を読み耽る。
2日目
すぐ近くにある観智院へ。図書館長の土屋正道さんは住職をしている観智院で様々な会を開催しているのでそれに参加してみる。大門、御成門など増上寺と縁のある場所を訪ね歩く町歩きも楽しい。

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。