ほかにも、難民申請をしている外国人に日本語を教えているグループから「なかなか外とつながりができない」と相談を受けると、多聞院の中庭を貸し出して菜園づくりに協力。その縁で、難民申請中のネパールの男性とグループの関係者が多聞院でカレーパーティーをしたこともあるという。
日本は難民申請の認定率が0.2%と、極めて難しいことで知られる。そのネパールの男性は恐らく大変な思いをしていることだろうし、サポートする日本人も楽ではないはずだ。そういう人たちが多聞院に集って野菜を作ったり、カレーパーティーを楽しんでいる様子を想像したら、「一時の安らぎ」という言葉が浮かんだ。
「分け隔てがないのが仏教ですから。生死を越えてすべてがつながっているし、いろいろなものがつながって今があるということです。もともと、お寺は政治や経済とは切り離された場所ですよね。都会こそ、そういうところで心を解放することが大切なんです」
最初はただ単に、未知の漫画との出会いを期待してお寺の漫画図書館にやってきた。でも、土屋さんと安さんから話を聞き、写経、写仏を体験し、漫画を熟読して気づいた。多聞院には、どこか安心できる雰囲気がある。それはカフェの居心地の良さとはまた別もので、自分はここにいてもいい、受け入れられているという優しい感覚だ。
そこで写経や写仏に集中すれば雑念を忘れるし、時間を忘れて漫画に読みふけるのも心の解放につながるだろう。落語だって、笑うことできっと心が楽になるし、受けた人が泣いてしまうタロット占いや心温まる菜園、カレーパーティーも同じく安らぎを提供している。そう、多聞院は現代のオアシスになっているのだ。僕は「心を解放することが大切なんです」という土屋さんの言葉を思い出しながら、思った。また漫画の続きを読みに来よう。