愛媛県上島町
「瀬戸内海に浮かぶ、愛媛県の離島「弓削島」。人気の旅行ルートである「しまなみ海道」から少し外れた静かな島で、農業を基盤に生きる移住者夫婦が、農家民宿を営んでいる。リゾート地に行ったり観光したりするのとは違う旅を、たまにはしたい。そんな想いに駆られて、弓削島を訪ねた。
最寄りのICから【E76】西瀬戸自動車道「因島北IC」を下車
最寄りのICから【E76】西瀬戸自動車道「因島北IC」を下車
離島。実に旅心を誘われる言葉である。リゾートとして人気が高い奄美大島、屋久杉が観光スポットの屋久島、アートの島として有名な直島など、離島と聞くと思い浮かぶ有名な島が日本にはたくさんある。
日本の有人離島の数はなんと400以上。特に、瀬戸内海には大小さまざまな島が浮かび、海と島、そして行き交う船がつくりだす風景の美しさは格別だ。普段、山梨の山に囲まれた土地に住む私からすると、それだけで特別感がある。
今回の旅で向かう弓削島は、私が『季刊リトケイ』のライターをしている縁から、数年前に訪ねたことがある島。そこで出会った若い移住者夫婦が、「農家民宿を始めたばかりで、いずれ食堂も開きたい」と言った。「まるふ農園」の古川優哉さんと藤巻光加さんは山梨出身で、東日本大震災もきっかけになり、東京から引っ越してきたという。
他の地方の田舎の例にもれず、若い農業者がほとんどいないこの地で、「なんて物好きな」というのが率直な印象だった。でも妙に彼らのことが気になっていた。
農家民宿とは、農林漁業に携わる人が旅行者を宿泊させ、自ら生産した農林水産物や地域の食材で料理を提供したり、体験メニューを提供したりする宿泊業のこと。全国に約2000軒(2010年の農業センサスによる)あるが、フランス、イタリア、ドイツなどはそれぞれ万単位の農家民宿があるのに比べると、日本におけるそれはメジャーな存在ではないようだ。しかも、農家の高齢化に比例して、「まるふのお宿」のような若い経営者は珍しい。