未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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能登島に生まれて育った男の島にかける想いが紡ぐ物語 被災したミナミバンドウイルカを訪ねて

文= きえフェルナンデス
写真= きえフェルナンデス
未知の細道 No.268 |11 November 2024
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#2能登の内海に浮かぶ島「能登島」

遡ること2時間前。今日はもうイルカには会えないだろうな、と能登にある実家の窓から雨雲に覆われた空を、見上げていた。その日は、曇りのち豪雨と天気予報が告げていたからだ。

「もしかしたら船は出ないかもしれない」と言われていたが、「天気が保ちそうなので13時に出港します」と連絡をもらい、慌てて能登島までやって来た。

約束の場所は、能登島の西側に位置する「ねやフィッシングパーク太公望」。イルカを見に行く船が、13時に桟橋に着くという。

車を降りると、ぽつりぽつりと雨が当たる。

<まずいな、雨具もなにも持ってきていない……>

イルカウォッチングに何が必要か確認もせずに来てしまった……と後悔していたとき、ウエットスーツ姿のシャキッとした女性が声をかけてきた。

「取材の方?」

声の主は、金山純子さん(63)。水族館の水槽内で餌付けショーをする元マリンガールで、現在はイルカとの泳ぎ方を教えたりボランティアで能登島と山水荘のサポートをしたりしている方だった。

「船の上は寒いから、これ着てください」

金山さんから上半身用のウエットスーツを貸してもらう。周りを見渡すと、参加者らしき人はみんな濡れてもいい格好をしていた。金山さんの心遣いに感謝した。

12時58分。船が到着。なかから、半ズボンに強面の海人100%な男性が降りて来た。石田さんだった。

「ようこそ来てくれました」

にこっと目尻にシワを寄せ、見た目とは裏腹な柔らかな物腰に、緊張がほぐれる。

「船上では、これ着といてください」

ライフジャケットを装着し、船に乗り込んだ。そして数分後、私は冒頭で記したように、能登島のイルカ達にくぎづけになっていた。

七尾湾は、西湾、北湾、南湾がある。

私の実家は能登にある。幼い頃から能登島の水族館へよく遊びに行っていたし、子どもが産まれてからも訪れていた。イルカが有名なことも知っていた。が、能登出身でありながら能登島のイルカにはそれまで一度も、会ったことはなかった。

2024年1月1日、能登半島が大きく揺れたあの日も私は、能登に帰省していた。能登島出身の叔母から、能登島も被害が大きかった、と電話で報告を受けた母がひと言、「イルカは大丈夫かねえ」と言った。私はその言葉が頭に残った。そこから、能登島で被災したイルカの情報を追っていた。

7月、「イルカウォッチングを再開しました」と能登島観光協会のサイトを見て、9月の帰省に合わせてイルカに会いにやって来たのだった。

能登島に住み着いた「ミナミバンドウイルカ」は、大西洋からインド洋にかけての熱帯から温帯の沿岸部を好むという。能登島は、ミナミバンドウイルカの生息地として最北となるそうだ。

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

ミナミバンドウイルカと泳ぐ旅

最寄りのICから【E41】能越自動車道「氷見IC」を下車
1日目
能登島大橋を渡り、能登島へ。イルカウォッチングまたはイルカスイムを楽しむ。イルカスイムをする場合は、山水荘でウエットスーツのレンタルができる(要予約)。夕方は、能登島の海沿いを散歩しながら、夕日鑑賞。夜は、山水荘で宿泊し、新鮮な能登島の幸をいただきゆったり過ごす。

山水荘(要予約)
2日目
ジンベエザメがいるのとじま水族館へ。昼食は、ひょっこり温泉島の湯の食堂で能登島の素材にこだわった「能登島バーガー」をいただく。食後は島を散策し、ひょっこり温泉島の湯を満喫。

のとじま水族館
ひょっこり温泉島の湯

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。