さて、小笠原さんと共に、常総市とその周辺のスリランカ、フィリピン、パキスタン、インド……とたくさんの外国人コミュニテイをみてきたが、この日のファイナルディスティネーションは、常総市のブラジル人コミュニティだ。
小笠原さんは、「自分の先輩のような場所があるから」といって常総市にある「えんがわカフェ」に連れていってくれた。ここは常総市の外国人支援支援組織「コモンズ」が手がけるコミュニティカフェだ。同じ地域で同じような活動をする人々同士が、互いに協力しあっているというわけだ。
スタッフの倉持京美さんと藤本ステラマリス・ユリコさんが出迎えてくれた。ユリコさんはブラジルで生まれ育ち、11歳で日本に来たという。
もともと常総市は日系ブラジル人が働く町のひとつとして知られていた。だが「リーマンショックや、東日本大震災、2015年の鬼怒川の大水害、そしてコロナが厳しかったですね」とユリコさんは語る。これらの影響で、常総市にあった大きなコミュニティは次第に近県に分散し、代わってアジア各地からの移民が増えてきているのが現状だ。それでも常総市にはブラジル人学校がふたつある。さらに水海道駅前には老舗のブラジルスーパー「TKストアGlobal Market」がある。ここはブラジルだけでなく、南米、アジア、ヨーロッパ各地の品物を取り扱っているため、ブラジル人はもとより、この地域に住むさまざまな外国人の生活の支えになっているそうだ。
さまざまな外国籍の子供たちの進学支援を担当しているユリコさんは、進学でも就職でも、要求される日本語資格が非常にハイレベルだという。移民の現実に立ちはだかる壁に、支援する人たちも非常に苦慮していることが伺えた。小笠原さんも、日本に馴染めず、学校に行きづらい子たちを励まし、メールのやり取りを毎日続けているという。
それぞれの活動の現状について会話はしばらく続き、どの外国籍であっても、日本での生活はまだまだ厳しく、すべての人々に継続したサポートがもっともっと必要なのだと言うことを実感させられたのであった。
別れ際、ユリコさんはこの近くにすごくおいしいブラジルスイーツの店があるので、帰りに寄ってみてください、と笑顔で教えてくれた。
早速いってみたブラジルスイーツの店「インペリオ アモール デ メウ」は、小笠原さんも初めて訪れたという。店主のアリアネさんの手作りのお菓子は、チョコレートやスパイス、ハチミツ、ココナツやチーズをたっぷり使っており、濃厚な味わいだけど、甘すぎない。おいしい上に、みためも美しい! どれもブラジルから取り寄せた食材を使っているという。
店主のアリアネさんから「どうしてここに来たの?」と尋ねられ、「ユリコさんにすすめられてきたんです」と答えると、「ああ!そうなの!」とにっこり。まだまだこの町のブラジルコミュニティの絆は健在だ、と思った。