未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
255

岩手から全国にはばたく毛織物 大正から続く伝統の「ホームスパン」

文= 白石果林
写真= 白石果林
未知の細道 No.255 |25 April 2024
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#6ホームスパンコースター作りに挑戦

見学し終えたところで、私は「ホームスパンコースター作り体験」(2024年3月時点で1000円、価格改定予定のため要問合せ)をさせてもらうことにした。みちのくあかね会では、見学・体験ともに予約不要で参加できる。製作にかかる時間は20〜30分程度なので、旅の途中にふらっと立ち寄って体験可能だ。

すでに経糸はセットしてくれていたので、緯糸の色を選ばせてもらう。少しくすみがかったブルーにした。「みなさんあんまり選ばない色です! センスありますね」と、木に登らせてもらい気持ちよくスタート。

はじめに渡辺さんがお手本を見せてくれた。その手さばきがどうにも複雑に見えて「できるかな......」とつぶやいてしまった。渡辺さんは、「大丈夫! できます」と笑う。

シャトルを滑らせて......トン......トン。シャトルを滑らせて......トン......トン。

  • シャトルで緯糸をすべらせる
  • バーを手前に引いて、トントンと2回打ち込みする

この「トントン」という打ち込みが強すぎると、ごわごわした手触りになってしまうらしい。気をつけているつもりなのに、つい「トン!!トン!!」と強く打ち込んでしまう。最初から最後まで同じ強さで打ち込むって、なかなか難しい。

繰り返していくうちに、コツを掴んできたような気がする。両端から糸がはみ出て、少し不恰好なことには目を瞑り、トントンを繰り返すこと15分。10センチの長さに織れたところで渡辺さんと交代。仕上げをしてもらう。

「ブルー、やっぱり可愛い! 上手にできましたね」と手渡してもらったのがこちら。

少し不格好ではあるが、手織りすると愛着が湧く

我ながら上出来じゃないか? コースターにするのはもったいないからデスクに飾ろう! とワクワクしながら受け取った。

ひと通りホームスパンのことを教えてもらったところで、私は渡辺さんがみちのくあかね会に入社するまでの道のりを聞いた。大学卒業後はテレビの技術会社で10年働いていたという渡辺さん。なぜホームスパンに関わるようになったのだろうか。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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