未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
243

創業400年以上の老舗酒蔵、24代蔵元の挑戦 酒粕で酒蔵の電力を100%まかなう完全循環。自然と共生した持続可能な「攻め」の酒造りとは。

文= ロマーノ尚美
写真= ロマーノ尚美
未知の細道 No.243 |10 October 2023
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#6世界中でモノづくりが危機に瀕している

海外に販路を拡大したことで、酒造りにサステナビリティという視点が加わったと小嶋さんは言う。

世界に目を向けると、大きなワイナリーや蒸留所は、容器を抜本的に見直してガラスから生分解性プラスチックに変えるといった、持続性に配慮した取り組みを行っている。食べ物・飲み物を作っている産業は、気候変動、気温上昇の影響を肌身で感じているからだ。

「ヨーロッパでは、伝統的なブドウ品種を植えられなくなってきています。従来ブルゴーニュではピノノワール、ボルドーではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが育てられていましたが、その品種の栽培適地でなくなりつつあります。本来は認められていなかった高温に強い品種を使ってでも、産地をラベルに表示できるようにレギュレーションを変えざるをえなくなっているんです」

世界各地で今まで通りのものを今まで通りに作ることができなくなっている、と小嶋さんは続ける。

昔ながらの日本酒造りの工程(酒造資料館「東光の酒蔵」展示より)

「海水温が上昇して、日本でも魚が獲れなくなってきていますよね。サンマは漁獲量が減って値上がりしているし、イカ漁で栄えていた港でもイカが獲れない。漁場はどんどん北の方に変わっていっています。米の品質も高温の影響で低下しているので、いま日本で新しい酒蔵やワイナリーを作ろうとすると、最初に候補に挙がるのは北海道という状況です」

小嶋総本店の酒造りも、もちろん例外ではない。気候変動による高温障害は酒米の不出来や収穫量の低下を招き、近年、狙った酒質に近づけるのが難しくなってきているという。この状況に、小嶋さんはどう立ち向かっているのだろうか。

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