結成から2年半、房総楽竹団にオリジナル曲ができた。今回のミニライブでは、終盤にオリジナル曲『竹生節(ちくしょうぶし)』が初めて披露され、竹で作られたオカリナ「バンブリーナ」のホーホーという優しい音色から曲が始まった。作詞作曲を手がけた田崎さんが、マイクの前に立って歌い出す。
一筋縄では倒されぬ 筋の通ったしなやかさ
地に根を張って生き延びる 腰の据わったしたたかさ
今宵 祈りを 竹から月へ
かそけき光を 月から竹へ
あやかれ あやかれ このしなやかさ
あやかれ あやかれ このしたたかさ
あずかれ あずかれ そのおこぼれに
たまわれ たまわれ その恩恵を
竹の力強さと、竹に寄り添い生きる人々を歌った『竹生節』。竹林が多い千葉県の人々にとって竹が身近な存在であることが伝わってくるような曲だった。のびやかな歌声を包み込む竹の音色は、この演奏会で聴いたどの曲よりも優しく感じた。
ミニライブのあと、木下さんにお話を伺いにいくと、団員のオノミチさんが「今日のリハーサルで『竹生節』を演奏したとき、団長が涙したんですよ」と教えてくれた。木下さんは照れ臭そうにしながらも「実はこれまでに何回も泣いてます」と語る。初めての演奏会では、演奏中にも関わらず涙が出てきたそうだ。
「夢が叶ってるというのもあるけど、それよりも、みんなが一生懸命に演奏して、力を結集していることが、なんかすごいなと思って。自分が始めたことなんだけど、やっぱりみんなの力がなければ叶わない光景だから」
みんなで竹を切り、失敗を重ねながら楽器を作り、一生懸命リズムを練習する。そうやって奏でた音楽に、魂がこもらないはずがない。木下さんが目指していた、大勢で竹の音色を重ねる光景が、千葉の富津市で実現しつつある。
「プロの打楽器奏者として年に何回も演奏会の舞台に立ちますが、房総楽竹団の演奏はまったく別物。なんでだろうなと思うと、みんなが音楽に対してフレッシュな気持ちで表現をしてくれるからなんでしょうね。正面から音楽に向き合う姿が、ああ、それだよねっていう気持ちにさせられる。原点、みたいなところを感じるのかな」
今は1時間ほどのミニライブ中心の房総楽竹団だが、いずれは2時間くらいのフルコンサートをやってみたい、と抱負を語る。その時には、今よりももっとたくさんの竹の音色が聴けるのだろう。竹のようにしなやかに、すくすくと。房総楽竹団も、伸びやかに音を重ねていく。