さて、ミニライブの2曲目は、その東京楽竹団が作曲した『竹の大地』だった。使うのは「スタンプ」と呼ばれる、東京楽竹団オリジナルの楽器。太くて長い竹の一番下の節だけを残して、それ以外の節をすべて抜き、竹の表面に1箇所だけ穴を開けてビニールの膜を貼ったものだ。これを床に置いた丸太にドスンドスンと打ちつけることで、膜が振動してビヨーンという不思議な音がする。
音の力強さだけでなく、太い竹を上下させて床に打ちつける姿には迫力があった。床を伝ってくる振動が本当に地響きを感じるようで、曲名の『竹の大地』を感じずにはいられない。耳だけでなく、目でも楽しめるのは演奏会の醍醐味だろう。
その後も、聞いたことのない楽器が多く登場した。長い竹の節を全部抜いて筒状にしたものをスポンジのついたバチで叩いて低音を出す「スーパーマウイ」。ハンドベルのようにひとつずつ揺らすことでメロディを奏でるインドネシアの楽器「アンクルン」。切れ目の入った竹を、同じく竹の棒で叩く「スリッタム」。
「竹という植物は、なかが空洞な上に節があるので、切るだけで容易に楽器を作ることができます。ほとんどが叩いたり振ったり吹いたりして音が出せるので、年齢や音楽経験の有無、その他ハンディキャップに関わらず、みんなで奏でることができるのが特徴です」
木下さんの言葉のとおり、中盤では「らくたけキッズ」と呼ばれる子どもたちも参加して、『八木節』に合わせてスリッタムを真剣に叩いていた。楽器を演奏するうえでは、音色やリズムはもちろん大切。でも、まずは叩いて音が出る体験や、みんなで音楽に合わせて一体となる経験が、子どもたちと音楽をつなげるのかもしれないと思った。
ミニライブの後半に入って、「おそらくこの音色が聴けるのは、房総楽竹団だけ」と木下さんが紹介したのは、なんと竹でできたバイオリンだった。弦と弓以外はすべて竹で作られているという竹バイオリンは、インドネシアの職人さんが作ったものだそうだ。優しく、どこか素朴な音色だった。
叩いて、振って、吹いて、弾いて……。竹という、たった一種類の植物から、こんなにもたくさんの音が出ることを、たしかに多くの人は知らないのではないだろうか。