このミュージアムは、小倉さんの父で「八戸クリニック」の院長であった、医師の故・小倉秀彦さんと共に2012年に開いたものだ。
青森市に生まれ、妻の出身地である八戸で開業した秀彦さん。開業してしばらくたち、秀彦さんは八戸の文化に何か貢献できないか、と考えていたそうだ。そしてそれはちょうど、吉田初三郎の再評価の気運が高まっていた頃に重なっていた。当時、八戸市博物館では大規模な初三郎の回顧展が行われ、その展覧会には種差観光協会の柳沢さんも深く関わっていた。
「父は博物館の展示を見て吉田初三郎を知ったのです」と小倉さんは語った。
そして秀彦さんと柳沢さんもこの展覧会を経て、出会った。
初三郎の魅力に触れた秀彦さんは、まず初三郎の鳥瞰図の原画『高野山名所図会』を入手した。その際は柳沢さんも確認に関わったという。
「父は自分の趣味ではなく、街のために、公開するために初三郎の作品をコレクションしていったのだ」と小倉さんはいう。
これを皮切りに秀彦さんは初三郎のコレクションを続けていった。さらに経営学を学んだのちに東洋美術史を学び、学芸員となった学さんがコレクションを担当するようになり、小倉家の初三郎コレクションは大きくなっていった。結果的に、初三郎の作品や資料が、多く八戸に残ることになったのである。