未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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都心から90分の大岳鍾乳洞で地球内探訪 異界のラビリンスへ、ようこそ

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.209|10 May 2022
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#5突然の継承

田中嘉伸さんと妻の友美さん。

その間にも、ユキさんの手伝いをする形でキャンプ場を整備して町のホームページや旅行雑誌に載せてもらったり、簡単なホームページを作ったりはしていた。最後に背中を押してくれたのは、当時まだ彼女だった友美さん。「そんなに辞めたかったら、辞めちゃいなよ。なにかほかに好きなこと探したら」と言われて、ようやく退職する踏ん切りがついたという。

2016年1月いっぱいで会社を辞めた嘉伸さんは、胸のうちでは鍾乳洞とキャンプ場を継ぐ決意を固めていた。ただ、祖母のユキさんが100歳になっても元気に鍾乳洞の営業を続けていたこと、その年の3月に友美さんとの結婚式を予定したこともあり、なんとなく伝えそびれていた。そして結局、ハッキリと自分の意志を告げる前に、ユキさんとの別れを迎えてしまう。

「(2016年)3月20日に結婚式を挙げました。祖母は少し体調を崩していて式には参加できなかったので、翌日に写真を持って行ったら、『よかったねえ』と喜んでくれて。ところが、23日の夕方、突然亡くなってしまったんです」

雄嘉造さんが亡くなった後、ユキさんはよく「もう私しかいないから」と言っていたという。恐らく、嘉伸さんが継ぐつもりだと知らないまま他界してしまったのだ。それは嘉伸さんにとって心残りだったが、鍾乳洞とキャンプ場を放っておくわけにはいかない。腹をくくり、翌月には2代目として経営を引き継いだ。

売店・休憩所には、100歳まで大岳鍾乳洞で働き続けた田中ユキさんの写真が飾られている。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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