大岳鍾乳洞のチャレンジコース最大の難関(僕にとって)をクリアした僕は、子どもの頃に憧れた探検隊のような気分で、登ったり、下ったり、しゃがんだり、這ったりしながら、「この鍾乳洞を発見して、見学コースとして整えた田中雄嘉造(おかぞう)さん、すごすぎ!」と思った。
今は各所に照明があるし、足場が悪いところには板が置かれて歩きやすくなっているけど、1960年の発見当時はなにもない。雄嘉造さんにとっては、まさにケイビングだったはずだ。その後、発見者の雄嘉造さんはこの鍾乳洞のオーナーになり、1961年に営業を始めた。現在は孫の田中嘉伸さんが後を継ぎ、妻の友美さん、嘉伸さんの両親とともに営業している。
……え? と大きなクエスチョンマークが浮かんだ読者も多いだろう。鍾乳洞は全国各地にあるが、なんと、大岳鍾乳洞は全国でも極めて珍しい「私営」なのだ。東京の天然記念物である鍾乳洞を、二代続けて経営する。どういう経緯でそうなったのか、どんな気分がするものなのか? いろいろ気になった僕は、JR五日市線の秋川駅から車で30分の大岳鍾乳洞に向かったのである。