翌日、共同浴場を管理する堀俊一さんに話を聞きいた。
「川原湯のまわりは温泉が湧く池のような状態になっていて、温泉が湧くあたりにすのこを置いて、その上に小屋を立てたような状態。地元でも昔から『川原湯はカラダに効く』という噂はあるよ。でも危険度も高いというか(笑)。風通しのいい立地だからまったく問題ないんだけど、源泉が真下にあるということは、その分だけ硫化水素が濃くなるということだから」
四季がはっきりしているという高地特有の季節感の中で、堀さんは夏の入浴が大好きなのだとか。湯上がりに「サパッとする(本人談)」爽快感が病みつきになるからだそうだ。硫黄泉の作用なのか、どんなに暑い日でも汗がピタリと止まるし、強い殺菌作用があるので、湯に入るだけで肌の汚れがきれいに落ちる。昔から夏にはあせもになった子どもを連れてやってくる湯治客が多いという。3日も入浴すればきれいに治るそうだ。とはいえ、強酸性温泉ならではの苦労話も事欠かないのだとか。
「とにかく何でもすぐに錆びる。家電製品が増えるほど苦労も増えるから(笑)。テレビはだいたい1年でダメになる。給湯器やFAXの寿命は2年くらい、冷蔵庫は4年使えればマシ。家電量販店で購入しても住所に『蔵王温泉』と書くと保証をつけてもらえない(笑)」
強酸性の温泉の刺激が強いのは、人体に対しても同じ。一般的な七日周期の湯治とは異なり、ここ蔵王温泉には、その効能の強さゆえに「七日一回り」を半分に短縮させた「三日一回り」という独自の湯治スタイルができあがった。私も湯あたりをしないように気をつけて上湯と下湯をさっと回り、ふたたび川原湯にやってきた。