海鮮丼を平らげて帰り道を調べると、ぼちぼち帰路に向かう時間が近づいていた。せっかくなら行きとは違うルートで帰れないか調べてみる。すると、酒田から新庄まで最上川に沿って走っている羽越線・陸羽西線という普通電車に乗ると、そこから山形新幹線つばさに乗れることがわかった。行きより時間はかかるけれど、これで帰ることにした。
それがもう大当たりで。
ちょうど陽が落ちてきているなかで、向こうの向こうの向こうまで金色に光る田んぼがずうっと見えて、風力発電の風車が何機も回り、ときおり最上川に出て、ただひたすら窓の外を眺めていた。じっくりと薄暗くなってきていたものが、最後は糸で引っ張られるようにしてしゅっと太陽が落ち、真っ暗になったころ新庄に着いた。
旅の終わりは心残りが山ほどある。もっと時間を切り詰めればあそこに行けたかもしれないとか、あれも食べておくんだったとか。出不精なわたしがこの次いつ旅に出ようとするか、考えただけでも遠い感じがするから余計だ。
でも、終わってしまったものは仕方ない。酒田で買った玉こんにゃくに月山(がっさん)ビールという地ビールを飲み、東京を目指した。山形新幹線を満月がずっと追いかけてきていて、建物に邪魔されながら発光信号のようになにか合図している。見ているうちに眠くなり、起きたら東京だった。