未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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『旅の思い出』編《青森の見方》を考えるリサーチの旅 本州最北端で過ごした1ヶ月間

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.191 |10 August 2021
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#8八戸の海

八戸の海

青森県は西は日本海、北は陸奥湾と津軽海峡、東は太平洋と、三方がまったく違う海域に囲まれた珍しい県だ。そして三方の海が作り出す風景は、それぞれ趣が違う。

日本海

まず、小岩先生と何度も行った西の日本海について。強い風が常に吹いている真っ青な日本海は、雄大という言葉がぴったりだ。風とともに波が海岸に打ち付けられ、景色は常に変わる。これをずっと見ていられるなあ、と思えるような、そんな迫力のある海だった。

静かな蓬田村の海

一方、青森市内の陸奥湾は「まるで鏡みたい……」と、ひとめ見て思った。特に春の陸奥湾は波がほとんどなくて、とても静かなのだ。透明度もあって、本当にきれいな海だ。でも海といえば「太平洋の荒波」が、デフォルトとして育った私としては、なんだか拍子抜けというか、少々物足りない感じもあった。

さて、あと数日で滞在制作も終わり、というタイミングで、青森市から2時間半ほど離れた、太平洋側の八戸市にも行ってみることにした。アテンドは地元・八戸のラジオ局のDJで、凄腕のフォトグラファーでもある「マモさん」こと、二ツ森さんにお願いすることにした。

八戸をめちゃくちゃ愛しているマモさんの案内で、初めて八戸の海と街を見ると既視感を覚えた。「ああ、太平洋だ! そうそう、これが〈海〉だよな!」とすぐに思った。これは私の持論なのだけど、私の故郷も含め、東日本の太平洋側の町の風景は、どこにいっても、少しずつ似ているような気がしている。町と町が遠い親戚みたいな感覚だ。太平洋がつないで作り上げた風土なのだと思う。マモさんに伝えると、私の感覚を理解してくれたようだ。

青森に住んで1ヶ月、一度も家に帰りたいとは思わなかったのだが、初めて太平洋を見たら、あっという間に故郷の風景を思い出して、ちょっとだけ帰りたくなってしまったのであった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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