ロッジに戻ると、バルコニーには広く紙が敷かれた。その上に、みんなの収穫がそっと並べられる。きのこ愛好家の皆さん恐るべし!の質と量だ。同じ種類のものは集められる。山のように採れたきのこもあれば、1本だけ横たわるきのこも。それらを、きのこ名人ハチさんが片っ端から判別していく。付箋に名称が書かれ、ペタペタと貼られ、食べられるか否かも知らされる(この作業、自然科学一般で「同定」というのだそうだ)。「お、ハタケシメジがたくさん採れたね。これはおいしいよ」とかいう言葉が聞こえてくると、期待に胸は高鳴る。全ての同定が済んだ頃、日も暮れた。
きのこ名人の活躍はまだまだ続く。前菜に、パスタに、メインに……どこの洒落たビストロ?という料理がどんどん仕上がって、我々の胃袋に収まって。どのきのこがどんな調理法に向いているか、ハチさんは長年の経験と探究で知り尽くしているような名人だった。お手伝いと称して真っ先に摘み食いしたい私にちゃんと気づいて、のんち副隊長は(わかってるよ)と目で語りつつお皿を手渡してくれる。
みずみずしさを保ったきのこには絶妙に熱が加えられて、それぞれの香りが噛むと口から鼻に抜ける。口福、至福。私には椎茸に見えたハタケシメジのソテーは、その特徴が最もわかりやすくて感動だった。おいしすぎて撮り忘れてしまった翌日のきのこ汁も……嗚呼。
ワクワクで、美味しくて、次の秋のきのこ会にも迷わず参加した。だが、3度目の秋がまだ来ない。最初よりも2度目、私の“きのこ目”は少しながら視力を得た気がしている。だから、次はもっちょっとよく見えると思うのだ(ハタケシメジ以外も、おいしいきのこをいくつか予習しておこう)。そんな秋を、待ち望まずにはいられない。
※未知の細道では、新型コロナウイルスの影響が収まるまで、ライター陣の過去の旅をつづるエッセイを掲載いたします。