未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
186

鳥取県

海の美しさが忘れられない、そんな場所はいくつかあるけれど、鳥取県は間違いなく、そのひとつである。鳥取の海岸線を東から西へと、3週間かけて旅をした思い出。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.186 |25 May 2021
  • 名人
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鳥取県

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#1鳥取へ

「鳥取の写真集をつくってほしい」
アートディレクターの林曉甫くんから連絡があったのは、2014年の春の終わりだったろうか。

その少し前、私が参加していた別のアートプロジェクトにマネージャーとして入っていたアキオくんは、今度は「鳥取藝住祭2014」というアートプロジェクトの総合ディレクターを務めるという。

「芸術祭」という言葉はよく聞くけれど、それと一文字違いの「藝住祭」。
この「藝住祭」のコンセプトは、アーティスト・イン・レジデンス(AIR:美術用語で、アーティストを招いて、滞在中の活動を支援すること。そのための宿泊施設をAIRと呼ぶこともある)や、地元の劇団「鳥の劇場」が手がける演劇祭などのプロジェクトを通して、「芸術が身近にある日常」を作り出す試みなのだ、とアキオくんは説明した。この藝住祭の各会場で無料配布する「鳥取藝住祭2014公式写真集」を作る仕事の依頼だった。

「藝住祭のコンセプト通り、松本さんもしばらく鳥取に滞在して写真を撮って欲しい」アキオ君は続けてそういった。

3週間も知らない町を旅しながら写真を撮るなんて、こんなに素晴らしい仕事は、そうめったにあるものではない。私は一も二もなく引き受け、すぐに鳥取へと旅立ったのであった。

鳥取の東から西へ、海岸線沿いに撮影する計画を立てた。レンタカーを3週間借りて、藝住祭に参加している人たちの拠点を回って、泊めてもらうことにした。経費節約の意味もあったけれど、知らない人々にたくさん会って、その人たちの写真も撮りたいなと思った。旅のコーディネートは、鳥取県庁の中にある藝住祭の事務局で働いていたアートコーディネーターのまりちゃんこと、里村真理さんがしてくれることになった。まりちゃんも、実は鳥取に来る前に一緒に仕事したことがあった。

そうして鳥取で過ごした3週間は、私にとって忘れられない日々となった。
旅を終えて戻ってから、上がってきたフィルムの束を見て、私は写真集のタイトルをつけた。それは『船と船の間を歩く』という。

北側が全て海岸線の鳥取には、美しい自然とそこで穏やかに暮らす人々との姿があった。そして海岸線には国際港から小さなローカル漁港など、さまざまな港があり、そこにいくつもの船があったのだ。
旅の間、私はそんな船を見つけては立ち止まり、また次の船のある場所へと旅していたのだな、と自分が撮った写真を見て、思ったのである。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。