未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
185

『旅の思い出』編「センス・オブ・ワンダー」と出会う旅 全国の野外芸術祭を巡ってきた20年間

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.185 |10 May 2021
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#42歳児の魂は、赤い世界で確かに震えた

塩田千春さんは、日本の現代アート界で多大なる人気を誇る作家。2019年に東京、六本木にある森美術館で開催された「塩田千春展」には、66万6271人が来場し、これは同館の歴代2位の記録だという(ちなみに、来館者歴代1位は、若冲やモネを扱ったものらしい)。

かつて保育所だった場所での展示「時を運ぶ船」

そんな彼女の作品に、奥能登では人が密集することもなくじっくり向き合えた。赤い糸が張り巡らされた空間に足を踏み入れた子は、「わぁ」と顔の表情を変え、その場を歩き回って、なかなか帰ろうとしなかった。

まだあまりしゃべれない子は、何を感じたかを表す術を持たなかったけれど、ただ、「ここにずっといたい」「なんだか好き」という気持ちは伝わってくる。私よりよっぽど体全体でアートを享受している小さな体。容れものは小さくても、生命力や感受性はこの体の中に激しく渦巻いているんだろう。そんなことを思った。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。