未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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『旅の思い出』編「センス・オブ・ワンダー」と出会う旅 全国の野外芸術祭を巡ってきた20年間

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.185 |10 May 2021
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#3大地の芸術祭の皆勤記録破れ、そして親になる

トビアス・レーベルガー「Something Else is Possible/なにか他にできる」(奥能登国際芸術祭)

2000年から2012年まで、5回の大地の芸術祭に皆勤賞だった私。毎年、開催年になると「いつ頃、誰と行こうかしら」とワクワク考えるのが当たり前になっていたのだ。しかし、2015年は初夏に出産予定で、どう考えても炎天下に生まれて間もない子連れ旅行は無理そうだと気づいて、ちょっと悔しい気持ちに。生まれてきた子には、「来年は瀬戸内国際芸術祭があるから、一緒に行こうね」と話しかけていた。

大地の芸術祭の初回から15年。野外芸術祭に足を運ぶ人も「アート好き」から徐々に旅行好きや、話題になっているから行ってみようかという人にまで広がってきていた。子連れ旅も然り。自分が毎回アートから何かを発見し、「行ってよかった」と思える体験をする場所に、まだ感性の柔らかい子どもが行ったらどんな感じなんだろう? と興味があった。暑い、たくさん歩く、不便も多い、と芸術祭を取り巻く状況を考えると、子連れ旅ハウツー的には、やめておいたら? という要素ばかりかもしれない。でもそこは工夫次第のはず、と初回は2016年、1歳の時に瀬戸内国際芸術祭へ、2017年には、長野県信濃大町で開催された「北アルプス国際芸術祭」、石川県珠洲市の「奥能登国際芸術祭」へ行った。

  • 漁網やブイなどの廃品を利用した「みんなの遊び場」(奥能登国際芸術祭)
  • 足元がカラフルなだけでも嬉々として歩く子

予想通り、我が子は芸術祭が好きだった。多くの作品は野外にあり、周りは海や山、虫や草花などの自然が豊富なところが多い。親にとっても「静かにしなさい!」「ダメ!」という機会が少ない環境。子どもがいかにも好きな作品もあるので、そういうところで遊ぶのもいい。

最涯の漂着神(奥能登国際芸術祭)

そして我が子は奥能登、塩田千春さんの作品を前にして覚醒する。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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