未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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『旅の思い出』編 弁天様が嫉妬する? 江の島に通い続けるカップルの行方

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.179 |10 February 2021
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#4「江の島はどうだったの?」で知った夫の計画

あるとき、普段は自分から出かけようと言わない夫が、やたら「今年は江の島、いついく?」と聞いてくる年があった。

当時、私はシフト制の仕事をしていて、なかなか休みが合わないし「今年は行かなくていいかな」くらいに思っていたのでそう伝えても、「いや、せっかくだし行こうよ」と予定を聞いてくる。「今月中に行こう」「いつならいい?」と聞いてくる夫をよそに、やはり休みが合わず。その夏は、夫の実家であるシカゴに行くことが決まっていたので、江の島にはそのあとにした。

シカゴで過ごす夏は、とても気持ちがよかった。日本に置いてきた仕事も予定も全部忘れて、私はリラックスした日々を送っていた。

そんなある日、義母がふと「そういえば、江の島はどうだったの?」とニコニコしながら聞いてきた。はて? 江の島の話をしたっけな。どうだったも何も、今年はまだ行ってない。

夫を振り返ると、ものすごい顔で義母を見ていた。その顔を見てハッと口をつぐむ義母。その二人の表情を見て、私はすべてを悟ってしまった。夫は今年、江の島でプロポーズするつもりだったのだ。そして、その嬉しい報せを持って実家に帰りたかった。だから、あんなにも「江の島に行こう」と急かしてきていたのだった。

「いや、なんでもない」と急にごまかそうとする義母と夫を見て、ものすごい笑いがこみ上げてきたのを今でも覚えている。そうか、私はこの人たちと家族になるんだ。

一度は挫折した江ノ島水族館も、その後何度かリベンジ。暑い日差しを避けてのんびりするのにぴったりの場所だ。

帰国後、私たちはちゃんと予定通り、江の島にやってきた。私は「今日プロポーズされるんだ」とわかっていたし、夫は「私がプロポーズされると知っている」と知っていたから、なんだかおもしろいデートだった。なんなら、二人で「どこにしようか」と、プロポーズに良さそうな場所を探したりした。

結局、初デートでも訪れた「恋人の丘」がいいのではということになり、高台へ。海を見ながらのプロポーズかと思いきや、結構人がいたのでさらに森の奥のようなところまで進み、木々が生い茂る薄暗い森のなかで、無事にプロポーズを受けた。

夏の湿気た森の奥。白いズボンを履いていた夫は「汚れるからひざまずくのはやめるね」と言うし、私は飛び回る蚊が気になって集中できないし、いろいろな意味で忘れられないものになった。

せっかくなので、プロポーズ後に龍恋の鐘の前で写真を撮った。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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