その翌年も、アメリカに帰国していた夫が日本を訪れたタイミングで江の島に向かった。飽きることなく同じルートを辿り、ヒイヒイ言いながら階段をのぼり、タコせんべいを食べた。「去年はここでこんな話をしたよね」「もう1年経ったね」と、日本とアメリカの遠距離恋愛でありながら、なんとか続いている自分たちの歩みを振り返るような1日だったように思う。
その後、夫が日本で就職し、一緒に住むようになってからも江の島はいつも私たちのデートスポットだった。あるとき下調べもせずに「江の島水族館」に行ってみよう、と向かってみると長蛇の列。「並ぶのが嫌い」という共通点を見出して、そそくさと帰った。
カップルは一緒に過ごす時間のなか、さまざまな言動で「この人とはこれからも一緒にいられるだろうか?」「こんなところが合うな、合わないな」と見極めていくだろう。私たちもたくさんの時間を一緒に過ごし、相手の好きなところや譲れないところ、ムカつくが我慢できるところなどを見つけてきた。
そして、そのなかには間違いなく江の島での時間があった。永遠に続くような階段の途中で「もう休もうよ……」と言い出すタイミングとか、毎回飽きることなくタコせんべいを食べるとか。1時間以上並ぶくらいなら水族館は諦める決断も、おいしそうなスイーツを買い食いする喜びも。「ああ、この人とはこんなふうに楽しめる」と教えてくれたのが江の島だったのだ。