未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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気温は氷点下!だけどホッコリ温かい! 層雲峡氷瀑まつりが12万人を集める理由

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.156 |25 February 2020
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#5さっぽろ雪まつりよりいい!

水が凍ったままの状態で人間の手を加えていない建造物は、不思議な形をしていて、荒々しさのなかにも自然の造形美を感じる。昼間の会場は、氷の建造物が青々とそびえたっていて、映画やゲームの「氷の世界」に紛れ込んだような気分になる。陽が落ちる頃からライトアップが始まり、会場が七色に染まって幻想的な雰囲気だ。

会場を歩く人と建造物を対比すると巨大さがわかる。

今年のテーマは「銀河系」。会場のなかでひときわ目立つ巨大な氷の建造物は、宇宙ステーションをイメージしたものだ。長さ120メートルのトンネルが通っていて、なかには氷を削った大小の作品がある。氷のクマに抱っこしてもらったり、天使の羽を生やしたり、龍の口のなかに入ったりできたりと、来場者の「写真映え」を意識した展示で、大勢の人がいろいろなポーズで写真を撮っていた。

「札幌から下道を走って5時間ぐらいかけて来た」という女の子二人組は、この展示が「さっぽろ雪まつりよりいい!」と言った。

「トンネルのなかにあるオブジェで、たくさん写真が撮れるのがいいですね! 札幌は(雪像を)見るだけだから」

スポンサーのHISの名前が神社の鳥居にもドドーンと。

ほかにもいくつか建造物があるなかで、思いっきり目立っているのは赤い鳥居が鮮やかに映える氷瀑神社。20年ほど前からこのお祭りに登場したそうで、なかに入ると、地元・上川町の宮司が御魂入れした氷の神玉(かみたま)が鎮座している。

来場者がお賽銭を張り付ける場所を確保するために、事務局で何度かお賽銭を回収するそう。

その前にはお賽銭箱が設置されているけど、神玉や周囲の壁にたくさんのお賽銭が張り付けられている。僕も10円玉を出して神玉に押し付けたら、驚くほどの速さで10円玉が神玉のなかに埋め込まれていって、2、3秒でくっついた。

「誰が始めたのか、自然発生的にお賽銭を張り付けるようになりました。お賽銭が落ちないから『試験に落ちない』とか、お賽銭がくっつくから『金運アップ』と言われています。町内の社会福祉協議会の職員には、氷瀑神社でお祈りして入社できたという人もいるから、ご利益があるのかもしれません(笑)」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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