水が凍ったままの状態で人間の手を加えていない建造物は、不思議な形をしていて、荒々しさのなかにも自然の造形美を感じる。昼間の会場は、氷の建造物が青々とそびえたっていて、映画やゲームの「氷の世界」に紛れ込んだような気分になる。陽が落ちる頃からライトアップが始まり、会場が七色に染まって幻想的な雰囲気だ。
今年のテーマは「銀河系」。会場のなかでひときわ目立つ巨大な氷の建造物は、宇宙ステーションをイメージしたものだ。長さ120メートルのトンネルが通っていて、なかには氷を削った大小の作品がある。氷のクマに抱っこしてもらったり、天使の羽を生やしたり、龍の口のなかに入ったりできたりと、来場者の「写真映え」を意識した展示で、大勢の人がいろいろなポーズで写真を撮っていた。
「札幌から下道を走って5時間ぐらいかけて来た」という女の子二人組は、この展示が「さっぽろ雪まつりよりいい!」と言った。
「トンネルのなかにあるオブジェで、たくさん写真が撮れるのがいいですね! 札幌は(雪像を)見るだけだから」
ほかにもいくつか建造物があるなかで、思いっきり目立っているのは赤い鳥居が鮮やかに映える氷瀑神社。20年ほど前からこのお祭りに登場したそうで、なかに入ると、地元・上川町の宮司が御魂入れした氷の神玉(かみたま)が鎮座している。
その前にはお賽銭箱が設置されているけど、神玉や周囲の壁にたくさんのお賽銭が張り付けられている。僕も10円玉を出して神玉に押し付けたら、驚くほどの速さで10円玉が神玉のなかに埋め込まれていって、2、3秒でくっついた。
「誰が始めたのか、自然発生的にお賽銭を張り付けるようになりました。お賽銭が落ちないから『試験に落ちない』とか、お賽銭がくっつくから『金運アップ』と言われています。町内の社会福祉協議会の職員には、氷瀑神社でお祈りして入社できたという人もいるから、ご利益があるのかもしれません(笑)」