未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
155

「これからもきっと変わらない」港町に、幸せのカタチがあった 真鶴半島の「泊まれる出版社」

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.155 |10 February 2020
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#2路地の先に隠れ家があった

東海道線の真鶴駅に降り立ったのは、細かい雨が降る寒い日だった。小さな駅舎には真鶴半島の地図が張ってあり、ちょこんと突き出した半島の形が翼を広げた鳥に似ていた。

この雨はいずれ雪に変わるのかなあ。
そう思いながら長い坂道を降り、携帯の地図アプリを頼りに「真鶴出版」を目指す。駅から坂を降り、歩いて数分。パン屋さんやピザ屋さんを通り過ぎ、この辺かなと周囲を見回す。いや、違うか……。
どういうわけか、地図上の矢印は、道路に面してない場所を指している。改めてメールに書かれていた案内文を読み直すと、
「駅から真鶴町役場に向かって歩いてくると、左手に茶色い看板があります。看板の前を通って細い路地へお進みください。看板後ろの大きな路地ではありません」
とある。
看板の前の路地って……?
そう言われると、確かにものすごく狭い路地があった。
まさか、あの路地の先?
半信半疑で進むと、オレンジ色の淡い光が漏れた民家が見え、小さく「真鶴出版」の文字。


わお、これは、本当の隠れ家だ、と心から感動した。
日本全国のいろんな宿にいったけれど、間違いなくいままでで一番見つけにくい宿の入り口だった。

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。