幕間に客席を離れると、番傘を片手に、バシッと着物を着こなした外国人の一団がいた。近寄って声をかけると、なんと彼らも次の演目に出るというではないか。みな、この周辺で働いているという彼らは、常陸大宮市国際協力協会が開いている「ばらの会」という日本語教室のメンバーなのだという。
彼らの国籍は、パラオ、カナダ、ネパール、ベトナム、インドネシア、アメリカ、イギリスとじつにさまざま。この静かな里山にも、こんなにいろんな国の人々が働きに来ているんだなあ! と改めて驚く。
この国際色豊かなチームによる出し物は「白浪五人男」をアレンジして、日本語で自己紹介する「SHIRANAMI」のほか、「姫さまを救い出せ」という寸劇もあった。二人の忍者が悪い殿様から姫様を救いだす、という筋書きだ。
忍者役はネパールからやってきた中学生のアリくんと、高校生のサムンドラくんなのだが、手裏剣を投げるタイミングは、敵である殿様役、イギリス人のニックさんが、舞台の上でこっそりと「よし、手裏剣投げて!」なんて出したりしている。その声はマイクを通して客席まで届いてきて、なんだかちょっとおかしいんだけど、見ていてほのぼのとした気分になる。この楽しい寸劇もこれまた喝采とおひねりが舞っていた。
その他にも三味線や創作舞踊、幕間には常陸大宮市の豪華特産品があたる「お楽しみ抽選会」など、歌舞伎以外の出し物も織り混ぜながら、定期公演はどんどん進んでいった。