大河さんが教えてくれたのは、まずポイについて。実はこのポイ、人の手で一枚一枚和紙を張って作られているのだそう。
「だから、張られた和紙の繊維の向きまで見る。自分がすくいやすい向きを考えて、金魚が和紙の繊維に逆らって乗るようにすくう」
そう言って大河さんが指さしたのは塾生たちの「マイポイ」のキープ。練習のときから自分の癖や得意なすくい方に合ったポイを選んで、専用の箱で管理している棚がある。検定や大会のときは、事前に渡される5本のポイの中から1分以内に使うものを選ぶ。自分がすくいやすい向きのポイを選べるかどうかが、すでに勝敗を分けているのだ。
ポイには裏表があり、それを確認してから持つこと。握る位置や指の数。水面に浮かべるお椀にはたっぷり水を入れておかなければならないことなど、実際に金魚をすくう前にも考えなければならないことがたくさんあった。そして実際にすくう段階になったら、注意しなければいけないことはもっとたくさんあった。
「一で斜めにすっと入れ、二で水面と平行にしてから移動する」
金魚すくいで大事なのは、とにかく水の抵抗を作らないこと。私は、ポイを水中に入れると焦ってしまって、ポイが平行になりきらないうちに金魚を追いかけたくなってしまう。しかし、そうすると水圧がうまれ金魚はその水圧に乗って逃げてしまうのだ。
水圧を作らず金魚の下に移動して、ゆっくりと持ち上げる。金魚を乗せたまま水面を移動し、水を切ってお椀へ。大河さんがやっているのを見ていると簡単そうなのに、どうしてこんなに難しいんだろう。
教えるついでに、大河さんがいくつかの技を見せてくれた。
「尾びれ外し」と呼ばれる選手たちの間では当たり前の技は、その名の通り、金魚の尾びれだけをポイの外側に外した状態ですくう。尾びれがバタついてポイにダメージを与えるのを抑えるためだ。
尾びれを外しながら、どんどんすくっていく大河さんに「ポイポイとすくっていてすごいですね、ポイだけに……」と言ったのだけれど、集中していて聞こえなかったようだった。
Tik Tokで多くの人が評価したもうひとつの大技が「追い込み漁」。塾生でもできる人が少ないというこの技は、水槽の角に金魚を追い込み、複数匹を一気にすくいあげる。これをマスターすれば記録が伸ばせそうだが、もちろん少し練習したくらいではできなかった。
指導を受けたあとは、ひたすら特訓。基礎練習のように、ポイの一点だけで金魚をすくう練習を続ける。その部分が破れたらひっくり返してまた練習。塾長がお昼ごはんを食べているあいだも、ひたすらに自主練習。
最初、何も考えずにすくっていたときは「頭をからっぽにして集中できて楽しいな」なんて思っていたけれど、本当はびっくりするくらい考えることがたくさんあるのだ。ただ闇雲にすくうのではなく、ポイの傾きや水圧、金魚の動きに合わせた戦略を考えながらすくうのは、とても脳みそを使うものだった。
未知の細道の旅に出かけよう!
「金魚すくい塾」で猛特訓 旅プラン
※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。