未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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3分間ですくってすくってすくいまくれ! 「金魚すくい塾」で猛特訓

文= ウィルソン麻菜
写真= ウィルソン麻菜
未知の細道 No.143 |9 August 2019
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#4練習コースに挑戦

年季が入った「金魚すくい塾料金表」。金魚を持って帰る人は少ないそうだ。

いよいよ入塾。練習コースは1回、つまりポイ1枚で100円だ。回数が増えるほどお得になるので、私は10回500円を選んだ。上手な人だと、この500円で1日中金魚すくいをしているという。

「最初の1枚は、自分の力でやってみよう」

実は取材前に、大河さんが Youtube にあげている動画で予習してきた。最近は娘さんのアドバイスでTik Tokにも動画を投稿し、4,000人以上のフォロワーがいるそうだ。音楽に合わせて真っ赤な金魚が泳ぐ様は、たしかにきれいだった。

金魚すくい塾のYoutube動画。多いものでは再生回数が5万回を超えているものも。

動画の動きを思い出して、見よう見まねで金魚を追う。水中に手を入れていると、意外なことに金魚がドクターフィッシュのように手をつついてきて、くすぐったい。

「連日の金魚すくい練習で少し人に慣れてきてるかな。慣れすぎると簡単にすくえちゃうから、餌はあまりあげないようにしてるんだけどね。でも慣れていない金魚は、とてもすくえないよ」

他の動物と同じように、金魚にも「人に慣れる」ということがあるのに驚きつつ、金魚すくい屋さんの難しさを感じた。すくいやすすぎず、すくいにくすぎず、いい塩梅にしておかなければいけないのだ。

さらに驚いたのは、ポイが想像以上に破けにくいこと。

「ポイにも号数があるんだ。4号が一番丈夫で、保育園や老人ホームで使うもの。5号は一般的な大会で使われるもの。6号は祭りで金魚すくいをしている業者さんが使う薄いもので、僕でも2、3匹しかすくえない。7号は水に入れただけで破れちゃう。KIN-1グランプリでは4号を使って勝負する。すくえなきゃ、おもしろくないからね」

屋台の金魚すくいが難しい理由がひとつわかった。たしかに、このポイでは、少し金魚が乗ったくらいでは破けない。制限時間を設けなければ、いくらでもすくえそう。そう思った矢先に、大きな穴が開いた。お椀には、なんと22匹もの金魚たち。

「すくえなきゃ、おもしろくない」

大河さんは何度もそう言ったけれど、少しすくえると本当に楽しくなってくる。もっとすくいたい、もっと上達したい、という気持ちが湧いてきて、塾長の指導をお願いした。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
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様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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