未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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白魚マスターと宝の湖の22年

白魚の踊り食い。その希少なる世界

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.138 |24 May 2019
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#6一魚入魂の22年

 2001年11月から「活魚」として白魚を提供できるようになり、不可能を可能にしたニュースとして当時、大いに話題になった。それから19年。現在では最長でおよそ140日間、水槽で生存できるようになった。この技術をさらに活かすために、蛯名さんはさまざまな取り組みをしている。

 ある時は、隅田川の水質向上などに取り組んでいる東京の市民団体、墨田川市民交流実行委員会から連絡を受けたのがきっかけで、隅田川の白魚を復活させようと、東京まで白魚を運んで50匹を放流。ある時は、白魚を展示している水族館が日本全国で2つしかないと知って、自ら東京の水族館に売り込んで、しながわ水族館での展示に漕ぎつけた。現在は、地元の小中学校に白魚を提供。透明な白魚は顕微鏡でのぞくと骨格などが良く見えるため、子どもたちに喜ばれているそうだ。

 いち料理人の枠を超えて、白魚と二人三脚で22年。「かれこれ、白魚には1500万円ぐらいつぎ込んだかな。ぜんぜん儲かんないけど、私は猪突猛進型だから(笑)。普通の人にはできない経験をしてるしね!」という蛯名さんは、とても良い笑顔をしていた。

蛯名さんの背後に見える右側の魚拓は、小川原湖で獲れたうなぎ。でかい!
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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