未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
138

白魚マスターと宝の湖の22年

白魚の踊り食い。その希少なる世界

文= 川内イオ
写真= 川内イオ
未知の細道 No.138 |24 May 2019
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#5前代未聞の挑戦

白魚への熱い想いを語る蛯名さん。

 1997年、蛯名さんは周囲の料理人と漁師に声をかけ、役場から助成金をもらって「上北町活しらうお販売研究会」を設立。採れた白魚を生かしておくための研究が始まった。リーダーシップをとったのは蛯名さん。生物部部長の経験を活かし、あれやこれやと知恵を絞った。

 まず、水揚げ方法。白魚の大半は網から揚げた瞬間、圧迫されて死んでしまう。そのため、なるべく圧力を加えない採り方から考えた。通常は円形にまいた網をぎゅっと絞って水揚げするのだが、漁師の協力を得て網を開いた状態で持ち上げ、そこにいる白魚をすくうようにした。すると、水揚げ時点で死ぬ白魚が減った。

 すくいとった後も、工夫を凝らした。湖水を入れた桶に入れておくと、2、3時間で死んでしまう。桶にエアレーションを入れても、結果は変わらない。そこで蛯名さんは、湖水の塩分濃度に着目した。小川原湖は汽水湖なので、海水の塩分が含まれている。どの塩分濃度なら長く生き延びるのか、細かく塩分濃度を分けた桶をいくつも用意し、白魚を入れて生存時間を分析した。そうして試行錯誤を重ねた結果、小川原湖に近い0.4%から0.8%の塩分濃度、水温8度以下などの生存条件を特定することに成功した。

 「最初の頃、漁師からは難しい魚だからできるわけないと言われていたんだ。昔、東京の会社が挑戦したけど、さじを投げたって。でも私は、素魚は踊り食いできるんだから、白魚も大丈夫だろうって軽く考えてた。結局、何年もかかっちゃったよ(苦笑)」

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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
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