東京から八戸駅まで向かい、レンタカーをしてさらに北上。およそ1時間ほどで、小川原湖のある東北町についた。旅に出る前、僕のイメージはこうだった。ちょうど桜が満開の時期。花見でもしながら湖畔を散策し、青々とした「宝湖」の雰囲気を満喫。海水浴場ならぬ湖水浴場もあるから、暖かければ少し水遊びをするのも乙だろう。その後、「えび蔵」に向かって白魚とご対面。東北町にある「おがわら温泉郷」で一風呂浴びて八戸に帰るのも乙――。
八戸に着いた時点でわかってはいたけど、東北町に入ってハッキリと実感した。その日はワイパーを高速で動かさなければいけないほどの雨が降っていて、たまたま見かけた道路脇の気温表示は3度。冷たい風がビュービュー吹いていて、外を歩くと凍えるレベルで寒い。もちろん、花見をしている人なんてひとりもいないし、そもそも外を歩いている人がいない。はるばる小川原湖まできたのに季節外れの荒天にガックリきた僕は、小川原湖を後回しにしてえびぞうに向かった。
時刻は16時。開店前の準備をしていた蛯名正直さんが迎えてくれた。案内された奥の座敷に腰を下ろすと、蛯名さんは厨房に戻っていった。その間、広々とした座敷の壁に貼られた蛯名さんと白魚の記事を読む。テレビ、雑誌など多くのメディアが蛯名さんを訪ねてきて、白魚の踊り食いをしているようだ。町のPRとしても素晴らしい成果だろう。