未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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気分は『ニュー・シネマ・パラダイス』

100歳越えの現役映画館で過ごす贅沢な休日

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.136 |10 April 2019
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#7「世界ノトナリ」で映画の余韻に浸る

雁木造りの町屋を改装したカフェの入り口。

 映画館を後にして、ちょうどオープンして2年目に突入した「世界ノトナリ」へ。ここを主に切り盛りするのは、大久保喜和さんと佐藤範子さんの友人同士だ。
 「もともとは成人映画館だったのが、10年くらい前からワンコイン映画上映で普通の映画を上映するようになって、すごく嬉しかったの。自転車で行けるところに映画館ができた!ってね。それでボランティアで映画館の運営にも関わっていたんだけど、上映の前後にお茶が飲める場所がほしいよねって声をよく聞いて、じゃあやろうって勢いで友達の佐藤さんを誘ってオープンしちゃったのよ」と大久保さんは笑う。

 「人生、ノリとハッタリよ!」と明るく話す2人の朗らかさが店全体に満ちていてなんだか気持ちがいい。

世界ノトナリを経営する、佐藤さん(左)と大久保さん(右)は、一見さんでもすぐに打ち解けられる朗らかさ。

 「映画館に合わせてできた店だから、定休日が映画館の休みの日なの。だから私は前より映画が見られなくなっちゃって。でもその代わり、映画館帰りのお客さんに映画の感想を聞いたりしてね。それが楽しいんです」(大久保さん)

カフェ内観

 厨房には、映画の上映スケジュールが貼ってあり、いつでも映画の話題でお客さんと打ち解ける。2人と映画の話をしていたら、感想を言い合うことも含めて楽しい体験なのだと改めて感じた。

カフェのメニューは手作りにこだわったそう。野菜たっぷりのキーマカレーや自家製ハムなど、ていねいに作られた料理はしみじみとおいしい。

 映画鑑賞が終わって、のんびり歩いて30分ほどで高田公園へ。残念ながら名物の桜の開花には少し早かったのだけれど、気持ちのいい散歩になった。何気ないけれど、なんていい休日。映画の世界にいるような、レトロな映画館で映画を見る。その後、「世界ノトナリ」に寄る。その贅沢のために、また高田に来よう。

高田公園。夏にはお堀が美しい一面の睡蓮畑になる。
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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