さて、映画館を案内してもらい、話を聞いているうちに、私がチケットを買った映画『世界一と言われた映画館』の上映時間になった。この映画は、山形県の酒田市にあった映画館にまつわるドキュメンタリー。大火で焼けてしまったという、趣ある映画館の思い出がスクリーン上で語られると、世界館に漂う雰囲気となんだか似ていて、夢と現実が溶け合うような感覚に襲われた。それがすごく心地よくてウトウトしてしまったのだけれど……。それはとても贅沢な時間だった。
「平日に息抜きに映画館に来るってことが、もっと当たり前になってほしいです。そのためには、すごく遠回りに聞こえるかもしれないけれど、日本人は働きすぎ。大人がもうちょっと自由に休みが取れるようになるといいですね」と上野さんは言った。映画館の存続と働き方、意外な接着点だったけれど、「それは確かにそうですね!」と鼻息荒く私も賛同した。