こうした経験から生まれたのが、野毛大道芸フェスティバルの前身となる「横浜野毛祭(1985年)」だ。路上でアートや音楽、大道芸を披露するイベントで、仲間内のちょっとした酒の上の会話から「やろう!」と盛り上がり、自然発生的に始まった。
ちょっと話はそれるが、「野毛大道芸フェスティバル」の公式HPに掲載されている初期の立ち上げメンバーの座談会がめっぽう面白い。その中で、同じく初期のフェスティバル・プロデューサーの福田豊さん(野毛で中華料理屋を経営)は、「あの頃、僕らが使えるものは“道”しかなかった」と振り返っている。
僕らには“道”しかない、というカッコいいメタファーでもなんでもなく、「野毛には広場もなかったし、横浜にぎわい座もなかった。それで、やるとなったら道しかねぇだろうと」(福田豊さん)。
そう、野毛にはそれくらい何もなかった。イクオさんも当時こう感じていた。
この街はもう寂れきってて、失うものがないからなんでもやっちゃおう!