未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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物でも思い出でもない、新しい旅のおみやげに出会う旅

「生きる術」を持ち帰る離島の農家民宿へ

文= 小野民
写真= 小野民
未知の細道 No.130 |25 January 2019
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#5「種を採る」は命をつなぐこと

自分で採った種を出してくれる古川さん

古川さんが大切にしていることのひとつに種採りがある。「F1種」という言葉をどこかで聞いたことがある人もいるかもしれない。F1種とは、一代限りの栽培を前提としていて、人間が求める性質に品種改良されたもの。スーパーに並ぶ野菜のほとんどが規格の揃ったF1種だ。

「固定種」は在来種とも呼ばれ、それぞれの土地で代々種を採り受け継がれてきた品種。かつてはF1種はなく、育てて実ったものから種をとり、次の年に蒔くということを繰り返して、「固定種」の農産物が継がれていくのが当たり前だった。しかし、合理性を求めて来た結果、どんどん人間都合の作物が世の中には増えている。それが是か非かは、浅知恵の私が単純に言えることではないけれど、それでいいのかな、というモヤモヤはちゃんと心に留めておきたいと思った。

「僕の実感としては、F1種の方が固定種より収量が多く、ものによっては2,3倍の差が出るものもあります。固定種は生育のスピードや大きさもバラバラだし、マニュアルがない感じで、手間はかかりますね。でもね、きめ細かい感じっていうのかな。おいしいと思うものが多い。固定種にこだわるのは、種を継ぎたいという気持ちはもちろんだけれど、おいしい!自分が食べたい!というのが一番の理由ですね。」(古川さん)

いまでは、自家採種をしている、F1の種を使っていない農家は少数派だ。「種取りってやってみるとすごく難しくて、いつも必死ですね。名人は品種の特徴をよくあらわした株から種を採って、さらに株ごとに蒔き分けて生育を見比べて次の代の種を採って、と厳密にやっている。すごい世界ですよ」(古川さん)

「これが僕の採った種」と見せてくれた種は、当たり前なのだけれど、それぞれの野菜で色も大きさも全然違う。大根の種がすごく小さかったり、豆は食べる姿そのままだったり。思えば、こんなにどっさり、いろんな種類の種を一度に見たことはない。

古川さんの採った固定種の種の数々
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未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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