未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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これからの豊かな暮らしとは?

MeLikeと一緒に考える旅

文= 志賀章人
写真= 志賀章人、編集ひとり(Melike)一部提供
未知の細道 No.60 |20 January 2016
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#2ミニバンを部屋にして暮らしながら旅をする @MeLike

待ち合わせ場所は、東山梨駅。まだ18時を回ったばかりだというのに、とっくに店じまいを終えたのか、店の明かりも人の気配もなくて、まるで深夜のようだ。電車が行ってしまうと、時が止まってしまったようであり、僕以外のすべての人が消失してしまったようでもある。

指定された駐車場に向かい、暗闇の中、「ひとりさーん!」と呼びかけると。

ーーーッ!!!

三つの懐中電灯から集中砲光を浴びた。そう、ひとりさんは、ひとりではなかった。この日から、僕と同じような目的のメンバーが二人同乗することになっていて、結果的に四人旅となったのだ。ひとりさんのオープンマインドは半端ない。手を差し出しながら、ひとりさんが近づいてくる。

「どーも!どーも!」

どーもを2度重ねる人に悪い人はいない。ひとりさんと握手を交わしながら、MeLikeというメディアからにじみ出ている人柄と同じであることに安心する。そして、目の前には憧れのバン。

スバルの「サンバーディアスバン 660クラシック」。カスタムにお金がかかっていそう、と思いきや。色はそのまま、中もそのまま。90年代のバンを中古で買って、ロゴをペイントしただけだという。

フロントドアからバンの中を覗いてみると、運転席と助手席があるのは当然として、その後ろの座席は折りたたまれ、荷室エリアとあわせた一面に、白く塗られた木の板が敷いてある。大人ひとりが寝転がるには十分な広さだ。バンのお尻側からバックドアを開けると、折りたたんだ座席の高さと帳尻を合わせるように収納ケースが入っている。これで木の板がフラットになるというわけだ。ケースの中には、寝袋や鍋などのアウトドア用品が入っていて、ギターまで立てかけてある。まるで家、というだけでなく、雑誌に出てくるようなスタイリッシュな部屋をモバイルしているところがすごい。

さて、ここで問題が。このままでは四人がバンに乗れないのだ。というわけで木の板をひっぺがし、後部座席を蘇らせると、さすがに荷室エリアもいっぱいに。大人四人が乗り込んで走り出すと、駆け出しバンドの全国ツアーみたいにギュウギュウパンパン、ミニバンバン。狭さの分だけ距離も縮まるというもので、車内は自己紹介で盛り上がる。同乗者のお二人は、以前からのお知り合いで、ひとりさんが今夜向かう場所に興味があって合流することになったという。さっそく「今夜はどこにいくんですか?」と尋ねてみる。

「山梨には前も取材しに来たことがあるんですよ。そのとき知り合った方に、『SUNKING Cafe(サンキングカフェ)』という場所を勧められまして。聞くところによると、代官山の『ハリウッドランチマーケット』で立ち上げの頃から働いていた方が移住してはじめたお店らしいんです。取材の相談をしたら、今夜、DJライブもあるから取材の前に来てみたら、って誘ってくれて。とにかく行ってみようと思うんです」

おお! ハリウッドランチマーケット! 高校時代を大阪で過ごした僕にとって、代官山の“ハリラン”は憧れのアパレルショップ。上京したときには、真っ先に拝みに行ったものだ。当時、洋服は高くて買えなかったけど、缶バッジを買って大事に身につけていたものだ。

東京のオシャレ最前線でバリバリ働いていた人が、なぜ山梨を選び、どんな暮らしをはじめたのか? 僕もその方のお話を聞いてみたい。ワクワクしながらついていく。

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未知の細道 No.60

ライター 志賀章人(しがあきひと)

「え?」が「お!」になるのがコピーです。
コピーライターとして、核を書くことで、あなたの言葉にならない想いを言葉にします。
京都→香川→大阪→横浜で育ち、大学時代にバックパッカーとしてユーラシア大陸を横断。その後、「TRAVERINGプロジェクト」を立ち上げ、「手ぶらでインド」「スゴイ!が日常!小笠原」など旅を通して見つけたモノゴトを発信中。次なる旅は、夫婦で世界一周!シェアハウス暦8年の経験から、子育てをシェアする未来の暮らしも模索中。
伝えたいことを、伝えたいひとに、伝えられるようになる。そのために、仕事のコピーと、私事の旅を、今日も言葉にし続ける。
「新聞広告クリエーティブコンテスト」「宣伝会議賞」「販促会議賞」など受賞・ファイナリスト多数。

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「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
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