未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
55

東京の森で深呼吸をしよう 「東京最後の野生児」と歩く
奥多摩

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.55 |20 Nobember 2015 この記事をはじめから読む

#2いつだって森を歩きたい

さて、一方の私は東京の渋谷区生まれ、渋谷区育ち。1日の大半をPCに向かって過ごす。自宅の裏には、「川」とは名ばかりの汚い用水路が流れ、近くの「公園」は1分も走れば道路に飛び出すほどの狭さを誇る。
 そんな排気ガスあふれる大都会に暮らしているせいか。最近はむやみに森が恋しい。数日の休みがあれば、長野あたりの山中をうろうろしたくなる。といっても、別段山に登りたいわけではない。ただ、森に分け入り、深呼吸して、ちょこっと歩いて、お弁当を食べればもう満足。そんなエセなアウトドア派なわりに、トレッキングシューズとモンベルのリュックを身につけている。
 正直、そんな自分に戸惑ってもいる。なぜなら私は、ずっと生粋の都会っ子を貫いてきたからだ。数年前まで、山歩きとかキャンプとか、そういった単語をまとめて毛嫌いしていた。
 しかし、ある夏のこと。デキ心で訪れた上高地で、すべてが変わってしまった。林の木道を歩いている時、体は疲れているのに、逆に頭がすっとクリアになるような爽快感を覚えた。なんだろう、これ? なんだかわからないけれど、それは忘れがたい体験となったようだ。とにかく、その後はしょっちゅう「ああ、また森に行きたい」と恋心を募らせている……というわけ。
 だから、今回この奥多摩に来るのは心から楽しみだった。なにせここには、森林セラピーを目的とした専用ロードが5つもあり、資格を有した森林セラピーの専門家によるガイドが受けられるのだ。
 ん、ところで森林セラピーってなんぞや。それは、「医学的な証拠に裏付けされた森林浴効果」のことだそうだ。どうやら、森林浴は別に思い込みでも、迷信でもなんでもなく、心と身体によい効果があることが証明されているらしい。そうそう、あの上高地で感じたあの感じのことだよね? ということは、そのセラピーロードを歩けば、あの爽快感が再現されるのだろうか。
 それならば、もう行くしかない。
 そして降り立った青梅線・御嶽駅で迎えてくれたのが、土屋さんだったというわけである。



未知の細道 No.55

未知の細道のに出かけよう!

こんな旅プランはいかが?

奥多摩(2日間)

予算の目安 2万円~

最寄りのICから圏央道「青梅IC」または中央自動車道「八王子IC」を下車、奥多摩町へ
1日目
奥多摩の森林セラピーロードをゆっくり歩いて疲労回復。自分の体力や興味と合わせてロードを選択しましょう。
夕方は、奥多摩温泉もえぎの湯へ。
宿泊は、このエリアに20日所以上ある宿坊を体験しても面白いかも!?
2日目
朝からアクティブに渓谷や渓谷へ出かけて、ウオーキングやラフティング、山登りなどの各種アウトドアを楽みましょう。体力に自信がない人は、御嶽山のケーブルカーに乗車して景色を楽しんで。
ランチは、渓谷沿いの眺めの良いランチスポットや、土屋さんが運営する「つちのこカフェ」もおすすめ。

◎ オススメ! 土屋さんが主催する体験イベントやガイドウォークなどもチェックしてみよう。 森の演出家オフィシャルサイト

森林セラピーロード
もえぎの湯
ケーブルカー

※本プランは当サイトが運営するプランではありません。実際のお出かけの際には各訪問先にお問い合わせの上お出かけください。

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。