未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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[ 第50回特別企画 ]まだ見ぬ絶景をドライブ! 未知の絶景 [ 後 編 ]

文= 志賀章人
写真= 志賀章人
動画撮影= 株式会社ネクスコ東日本イノベーション&
コミュニケーションズ

未知の細道 No.51 |20 September 2015
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#20絶対にオススメしない絶景「太田神社」

「一切の責任は負いません」

血のような赤でそう書かれていた。せたな町の絶壁に立つ“太田神社(別名:太田山神社)”の入り口には、なぜかロープが垂れ下がっているのだが、その理由は石段に足をかけた時点で明白となる。壁を登るような急階段で、踵が浮くほど幅狭なのだ。 北海道最古の由緒ある神社ながら「日本一危険な神社」「エクストリーム参拝」などと恐れられているこの神社。付近一帯はヒグマをはじめ、ブヨ、蚊、ハチ、マムシが頻出する。なぜ登るのか、いや参るのか。それは頂上にある本殿からの景色が絶景らしいからだ。

石段が終わると、その程度の試練は序章にすぎないと言わんばかりの過酷な獣道に突入する。片時もロープを離せない急斜面を登り続けて40分。やっとの思いで森を抜けると、ダイハードな絶壁が待っていた。そう、前編のプロローグで触れた場所だ。足がすくんでカメラも構えられないまま、今にも壊れそうな、いや、すでに若干壊れている橋にしがみつく。そのとき掴んだワイヤロープも解けかけていて、針のような鉄が手に突き刺さる。思わぬ痛みに飛び跳ねると錆び付いた橋がグニャリと揺れる――ヤバすぎる。まさに一切の責任は負えない。この記事を読んだからといって、どうか行かないでほしい。


壁に沿って伸びる壊れかけの橋を這うようにして渡りきると、人ひとり立つのがやっとの頼りない足場に辿り着く。足を滑らせたら崖下まで一直線。転がったりバウンドしたりする余地もなく、200mほどのダイブの末、崖底に体を打ち付ける羽目になる。足の震えが止まらず、壁に背中を貼り付けたまま嫌な想像を振り払う。その背中の絶壁には鉄の鎖が垂れ下がっていて、本殿がその先にあることを示している。高さ7m。3階ぶんの高さを命綱なしでロッククライミングしなければならない。繰り返すがこれでも参拝である。


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まだ見ぬ絶景をドライブ!
未知の絶景 [ 後 編 ]

ライター 志賀章人(しがあきひと)

「え?」が「お!」になるのがコピーです。
コピーライターとして、核を書くことで、あなたの言葉にならない想いを言葉にします。
京都→香川→大阪→横浜で育ち、大学時代にバックパッカーとしてユーラシア大陸を横断。その後、「TRAVERINGプロジェクト」を立ち上げ、「手ぶらでインド」「スゴイ!が日常!小笠原」など旅を通して見つけたモノゴトを発信中。次なる旅は、夫婦で世界一周!シェアハウス暦8年の経験から、子育てをシェアする未来の暮らしも模索中。
伝えたいことを、伝えたいひとに、伝えられるようになる。そのために、仕事のコピーと、私事の旅を、今日も言葉にし続ける。
「新聞広告クリエーティブコンテスト」「宣伝会議賞」「販促会議賞」など受賞・ファイナリスト多数。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。