翌日、町の観光協会の会長を務める川端慎二さんに「オムライスの町」の誕生秘話を詳しく聞いた。川端さんは冒頭で紹介した桜色のオムライスを提供している「寿し割烹かわばた」の店主である。
「地域おこしのため、2011年に町から『オムライスの郷プロジェクト』の呼びかけがありました。町がひとつになるっちゅうのもいいなと思ってね。町を盛り上げるためならと、当時はたくさんの飲食店も協力してくれていました」
ただ、もともとオムライスメニューがなかったレストランなどでは、割りが合わずしばらくして加盟店から抜けるお店も多かったという。
川端さんは、25歳の頃から宝達志水町で寿司屋を営んでいる。かれこれ27年になる。
「当初うちではオムライスを出してなかったんです。この店は17時から開くお店なので。ランチメニューのイメージがあるオムライスは作っていませんでした。ただ、ほかの加盟店の皆さんに誘われて、協力したいと思い作り始めました」
いざ、オムライスを考案するとなり、職人魂がうずいた。みんながあっと驚くオムライスを作れないかな……。川端さんの頭の中に、宝達志水町の町の花である「桜」が浮かんだ。桜色のオムライス……これだ! インパクトだけではなく味にもこだわろう。川端さんは試行錯誤を繰り返した。そしてでき上がったのが、冒頭の「おむらい寿し」である。
リーゼントの寿司職人に桜色のオムライス。このインパクトに惹かれ、テレビ局が注目した。これまで著名人も数名訪れている。
「ただ食べて終わりではなく、食べることを楽しんでもらえるとうれしい」と川端さんは語る。