石川県羽咋郡
日本の洋食を代表するオムライス。里山里海の恵みを受けた小さな町にそのルーツはあった。モーゼが眠っているともいわれる町で、私はオムライスをはしごした。
最寄りのICから【E8】北陸自動車道「小杉IC」を下車
最寄りのICから【E8】北陸自動車道「小杉IC」を下車
粉雪がひらひら舞い散る冬のある日、私は「この中身当ててみてクイズ」を出題され、首をかしげていた。場所は、石川県の宝達志水町にある「寿し割烹かわばた」。
とろっと上に被さった卵焼きを崩し、ご飯をすくう。桜色のタレも一緒にスプーンに乗せ、大きな一口を頬張った。
なにこれ……「うっま!」
ヒトは想像していた味と違うおいしいものに出会ったとき、とっさに上品な感想など出てこないものなのだ、と思い知った。
このピンクの部分はなんだろう。クリーミーでほんのり甘さを感じる。スプーンを口に運びながら、頭を働かせる。
「桜でんぶ?」
「ブブー!」
「さつまいも?」
「ブブー!」
「寿し割烹かわばた」の大将、リーゼント姿で強面の川端さんがニヤリと笑う。
正解は、とある野菜とゴマペーストを混ぜたソースだった。「食べてみて、ぜひ当てて欲しい」と、野菜の正体は秘密にしている。ほとんどの人がこの野菜を当てることができないという。ちなみに、オムライスの中身は石川県の特産物であるのどくろや香箱ガニをほぐして酢飯と混ぜ合わせた、ちらし寿司になっている。
かわばたのオムライスは基本的に事前予約客のみに提供している。限定5食。
「このオムライスは作るのに20分かかります。というのも、まず、のどぐろを焼くところから始まるからです。一度焼いて冷凍したものを戻しても脂は出ない。だから、毎回オーダーを取ってから焼いています」
「脂が命だ」と川端さんは言う。これが寿し割烹かわばたのオムライス「おむらい寿し」の特徴である。焼きたてののどぐろが自分の持ち味を主張し、口の中で大勝利を飾っている。うまみや脂がご飯全体に行き渡り、上にふわあっとのった卵との相性も抜群だ。
それはそうと、なぜ、寿司屋にきてオムライスを食べているのかって?それはここが、「オムライスの町」だから。