芝商店会の「芝辛・激辛ストリート」を知ったのは、ある新聞記事がきっかけだ。その記事によると、まちを挙げて常設で激辛フードを推しているのは、日本でも京都府向日市の「激辛商店街」と芝商店会ぐらい。「稀」なものに目がない僕は、東日本唯一の存在に興味を引かれた。
ただし、僕はこれまで激辛フードを食べようと思ったことがなくて、未知の領域。ひとりで激辛ストリートの取材に行って、あえなく最初の一口で撃沈したら、取材にならない。そこで、自分のSNSアカウントで同行者を募ったところ、誰からも反応がなかった。
ええ!? 僕はこれまでも、ひとり取材だと撮影が難しかったりする時は、同じようにして友人、知人に同行を呼び掛けてきた。そのたびに立候補者がいて、これまで茨城、群馬、青森にまで来てくれた。それなのに、東京でゼロ!? その理由は、「激辛」だった。何人もから、「一緒に行きたいけど、激辛はちょっと……」とコメントがついたのだ。天邪鬼かつ、これまで激辛未経験の僕は、それだけの人を恐れさせる激辛とはどんなものなのか、ますます気になった。
誰もこないなら、仕方ない。僕は「現地で出会った人に声をかけて、一緒に巡ってもらうことにした」とSNSに投稿した。そういうアポなしアタック的な取材の経験もある。ただ、平日の昼間にうまく出会えるかなと不安に思っていたところ、ヒナエちゃんが名乗りを上げてくれた。きっと、「誰もいないなんてかわいそう……」と同情してくれたんだと思う。優しい子。