神奈川県鎌倉市
出版不況が叫ばれる昨今、小さくても個性的な出版社が静かなムーブメントが起こしている。たった一人で、または数人で、丁寧にじっくりと本を作る彼らは、“インディペンデント系出版社”などと呼ばれる。そんな個性的な出版社が多数集まる「かまくらブックフェスタ」は、今年で6年目を迎えた。あるわ、あるわ、他では見ないような魅力的な一冊が! 古民家の真ん中で、ひゃあ、と興奮した後は、すっかり軽くなった財布と供に70年後の未来に思いを馳せた。
最寄りのICから横浜横須賀道路「朝比奈IC」を下車
最寄りのICから横浜横須賀道路「朝比奈IC」を下車
その日の鎌倉駅は、秋の美しい古都を楽しむために、世界中からやってきた観光客でごったがえしていた。ぎゅうぎゅう詰めの江ノ電に乗り換え、由比ヶ浜の方角に向かう。和田塚駅を降りると観光客は魔法のように消えていて、街は休日らしいゆるゆるとした空気に包まれていた。
あいにくの小雨だったが、朝からワクワしていた。なにしろ、年に一度の“フェス”に向かっているのだ。フェスと言っても、ロックではありません。その名も「かまくらブックフェスタ」。本の祭典でございます。
大きな樹木の庭がある古民家が、目指す会場。古民家でブックフェスなんて鎌倉らしいなと思う。縁側で靴を脱ぎ、「お邪魔します」と声をかけた。中では、数人がくつろいだ雰囲気でお客さんを待っていた。午前中はまだ人が少なく、ああ、早く来て良かったと思った。
「本」にまつわるイベントは、今や日本全国で行われているが、「かまくらブックフェスタ」の最大の特徴は、参加する出版社のユニークな布陣だ。ここに集まっているのは、「インディペンデント系」とか「リトルプレス」などと呼ばれる小規模な出版社が中心だ。
第6回目を迎えるフェスの発起人の上野勇治さん曰く、「ユニークな活動をしている版元ばかりが集まっています」。今年の参加者は全部で十八の出版社や個人である。わりと本屋さんに足を運ぶ方だと自負する私でも、二社を除いて初めて聞く出版社である。
川内 有緒