未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
77

埼玉県さいたま市

今年から始まった「さいたまトリエンナーレ2016」(会期:2016年9月24日〜12月11日)は、127万もの人々が生活する大都市・さいたま市に、世界に開かれた創造と交流の場をつくりだすことを目指す国際芸術祭だ。今回は参加作家の一人、長島確さんによるアートプロジェクト、「←」(やじるし)の制作に同行してみた。市の全域で展開されるというこのプロジェクトの制作チームと共に、さいたまの街を歩いていくと、見えてきたものとは……。

文= 松本美枝子
写真= 松本美枝子
未知の細道 No.77 |25 October 2016
  • 名人
  • 伝説
  • 挑戦者
  • 穴場
埼玉県

最寄りのICから東北自動車道「浦和IC」を下車

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#1バスに飛び乗って

 秋晴れの朝。待ち合わせは8時20分の浦和駅改札前。そこには、さまざまな年代と背格好の7人の男女が集まっていた。
 「全員が集まったら紹介しますね」とその中の一人、長島確(ながしまかく)さんは私に言った。そうこうしているうちに、大きな荷物を抱えた女性が改札をくぐって、こちらにやってくる。これで8人。
 ちょっと急ぎましょう、と誰かが言い出して、一団は早足で移動しだした。いったん着いたところから、「違うな、ここじゃない、間に合うかな……」などと言いながら、今度は駆け足で元来た階段をまた降りて、別の階段を駆け上がる。たどり着いた先は、さいたま市役所行きのバス乗り場であった。間一髪間に合った8人の集団は、バスへと乗り込んだ。そして後部座席に座って、一息ついたところで、長島さんは私にみんなを紹介し始めた……。

 実はこの8人は、国際芸術祭である「さいたまトリエンナーレ2016」の参加作家のチームだ。彼らは「あるもの」に導かれて、街をひたすら歩き、「あるもの」を含む情景を撮影して展示する……というアートプロジェクトのメンバーなのだ。やがてバスは走り出し、この人たちとさいたま市を歩き続ける、小さな旅の一日が始まったのだった。

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未知の細道 No.77

松本美枝子

1974年茨城県生まれ。生と死、日常をテーマに写真と文章による作品を発表。
主な受賞に第15回「写真ひとつぼ展」入選、第6回「新風舎・平間至写真賞大賞」受賞。
主な展覧会に、2006年「クリテリオム68 松本美枝子」(水戸芸術館)、2009年「手で創る 森英恵と若いアーティストたち」(表参道ハナヱ・モリビル)、2010年「ヨコハマフォトフェスティバル」(横浜赤レンガ倉庫)、2013年「影像2013」(世田谷美術館市民ギャラリー)、2014年中房総国際芸術祭「いちはら×アートミックス」(千葉県)、「原点を、永遠に。」(東京都写真美術館)など。
最新刊に鳥取藝住祭2014公式写真集『船と船の間を歩く』(鳥取県)、その他主な書籍に写真詩集『生きる』(共著・谷川俊太郎、ナナロク社)、写真集『生あたたかい言葉で』(新風舎)がある。
パブリックコレクション:清里フォトアートミュージアム
作家ウェブサイト:www.miekomatsumoto.com

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。