埼玉県さいたま市
今年から始まった「さいたまトリエンナーレ2016」(会期:2016年9月24日〜12月11日)は、127万もの人々が生活する大都市・さいたま市に、世界に開かれた創造と交流の場をつくりだすことを目指す国際芸術祭だ。今回は参加作家の一人、長島確さんによるアートプロジェクト、「←」(やじるし)の制作に同行してみた。市の全域で展開されるというこのプロジェクトの制作チームと共に、さいたまの街を歩いていくと、見えてきたものとは……。
最寄りのICから東北自動車道「浦和IC」を下車
最寄りのICから東北自動車道「浦和IC」を下車
秋晴れの朝。待ち合わせは8時20分の浦和駅改札前。そこには、さまざまな年代と背格好の7人の男女が集まっていた。
「全員が集まったら紹介しますね」とその中の一人、長島確(ながしまかく)さんは私に言った。そうこうしているうちに、大きな荷物を抱えた女性が改札をくぐって、こちらにやってくる。これで8人。
ちょっと急ぎましょう、と誰かが言い出して、一団は早足で移動しだした。いったん着いたところから、「違うな、ここじゃない、間に合うかな……」などと言いながら、今度は駆け足で元来た階段をまた降りて、別の階段を駆け上がる。たどり着いた先は、さいたま市役所行きのバス乗り場であった。間一髪間に合った8人の集団は、バスへと乗り込んだ。そして後部座席に座って、一息ついたところで、長島さんは私にみんなを紹介し始めた……。
実はこの8人は、国際芸術祭である「さいたまトリエンナーレ2016」の参加作家のチームだ。彼らは「あるもの」に導かれて、街をひたすら歩き、「あるもの」を含む情景を撮影して展示する……というアートプロジェクトのメンバーなのだ。やがてバスは走り出し、この人たちとさいたま市を歩き続ける、小さな旅の一日が始まったのだった。
松本美枝子