未知の細道
未知なる人やスポットを訪ね、見て、聞いて、体感する日本再発見の旅コラム。
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書を捨てないで、まちへ出よう!

小布施の「まちじゅう図書館」をめぐる旅

文= 川内有緒
写真= 川内有緒
未知の細道 No.73 |25 August 2016
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#2一生に一度は行きたい図書館へ

 なあんだ、本当に図書館か、と落胆した人はちょっとお待ちくださいませ。「まちとしょテラソ」は、2011年に「ライブラリ・オブ・ザ・イヤー」に、さらに2013年にはTrip Advisorという旅行サイトで「一生に一度は行きたい世界の図書館」に輝いている。要するに、日本を代表する図書館なのだ。
 日本を代表する図書館ってどんなところか知りたいですよね? 
 駅から歩くこと2分。すぐに特徴的な外観の建物が見えてきた。

設計者は古谷誠章氏。自然豊かな街並みと見事に調和するユニークな建物は町民に愛されている
 

 中に入ると、光が溢れる大空間がばーん! と現れた。天井が高く、仕切りがないワンルームのような作りで、入り口から奥まで視界が開けている。
 当たり前だけど、たくさんの人々が本を読んでいた。小さな子どもからお年寄りまで。
 絵本コーナーでは、子ども達が靴をぬいでカーペットの上に座りこみ、奥のソファーコーナーでは横になっている人もいる。ここは、本好きの桃源郷じゃないか!?

 ——光。風。森。
 建物の中なのに、そんな言葉が頭に浮かんでくる。そして、ふわりと包み込まれるような心地のよい静けさ。誰もが彼もが、自分はここにいていいという安心感を感じているように見えた。
「ここは、図書館にしては決まりがゆるいんですよ」
 そう説明してくれたのは、館長の関良幸さん。「BGMが流れていたり、雑談もOKだし、ペットボトルなどのふたの付いた飲み物もOKとしています」
 おしゃべりがOK? BGMもあり!? と私は静かな興奮に包まれていた。

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未知の細道 No.73

川内 有緒

日本大学芸術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。
コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米社会の研究にいそしむ。その合間に南米やアジアの少数民族や辺境の地への旅の記録を、雑誌や機内誌に発表。2004年からフランス・パリの国際機関に5年半勤務したあと、フリーランスに。現在は東京を拠点に、おもしろいモノや人を探して旅を続ける。書籍、コラムやルポを書くかたわら、イベントの企画やアートスペース「山小屋」も運営。著書に、パリで働く日本人の人生を追ったノンフィクション、『パリでメシを食う。』『バウルを探して〜地球の片隅に伝わる秘密の歌〜』(幻冬舎)がある。「空をゆく巨人」で第16回開高健ノンフィクション賞受賞。

未知の細道とは

「未知の細道」は、未知なるスポットを訪ねて、見て、聞いて、体感して毎月定期的に紹介する旅のレポートです。
テーマは「名人」「伝説」「祭り」「挑戦者」「穴場」の5つ。
様々なジャンルの名人に密着したり、土地にまつわる伝説を追ったり、知られざる祭りに参加して、その様子をお伝えします。
気になるレポートがございましたら、皆さまの目で、耳で、肌で感じに出かけてみてください。
きっと、わくわくどきどきな世界への入り口が待っていると思います。