「卓さんみたいな人が、色んな場所を見てきた上で山梨に住んでいるってことは、山梨にはそれだけの魅力があるということで、山梨が故郷である私は嬉しいです」
そう話していたのは、ひとりさんに卓さんを紹介したという渡辺えみさん。渡辺さんは東京で働いていたこともあったが、地元である山梨に戻ってきた。だからこそ、東京の友人が来てくれたらよいお店を紹介してあげたいし、地元のいいところを知ってもらいたいと言う。この日の取材には、渡辺さんも同行してくれたのだ。それに、山梨石和シェアエコハウスの安福さんも一緒だ。取材後は、安福さんが交流のある「完熟屋」で晩ごはんを食べることになった。
MeLikeの旅には一泊二日とは思えない密度がある。最初にバンに乗り込んだ四人も、卓さんも、安福さんも、渡辺さんも、どんどん仲間が増えていって、気がつけばこうして打ち上げみたいな夜を迎えている。ひとり旅では味わえるはずもない夜である。
ひとりさんは、MeLikeを通して“気持ちのインフラを整えたい”と話す。
「取材をすればするほど、色んな暮らし方があることがわかるんです。リモートワークだったり、二拠点居住だったり、卓さんのようなしっかりとした移住だったり。共通して言えるのは、お金とか物とかじゃない豊かさがそこにはあって、考え方ひとつでそれは手に入る。これからも取材を重ねていくことで暮らし方の選択肢を増やしていきたいと思うんです」
“旅する休職中サラリーマン”でもあるひとりさんは、会社に所属しながら面白いことにトライすることも出来るんじゃないかと言う。
「私のような平凡なサラリーマンでも、少しでも何か世の中のためになることをできないかなと、ずっと思っていたんですよ。そのとき、会社に“クリエイティブ休暇”という制度があったことを思い出して、やってみよう、と。復職したら、今の経験を活かして、会社の事業にプラスになることができたらと思っています」
ここで言う「クリエイティブ休暇」とは、年単位の長期休暇を取得する代わりに、会社ではできない経験を積んで成長し、復職後に会社に還元していくような前向きな休職制度。まだ、取り入れている企業は少ないが、ひとりさんが勤めている会社のように、自由にチャレンジさせてもらえる会社が増えればいいな、と心から思う。
たとえ休職制度がなくても、やってみたい企画や、理想の暮らしがあるならば、ひとりひとりが勤めている会社に提案してみること。それこそが、「これからの豊かな暮らし」が生まれる起爆剤にきっとなる。これからのMeLikeの旅が、ますます楽しみに思える旅だった。
ライター 志賀章人(しがあきひと)